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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

過去最悪決算の危機マック、実は今年必ず黒字化する理由…アベノミクスで逆風下に立った企業

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

「これはマクドナルドの体質なのだ。つまり、上に立つ人間が厄介で面倒なことを強制的に下の人間にやらせるのだ。店長の酷使しかり、社長の記者会見しかりだ」

 最終消費者を顧客とする小売業やホテル業というのは、一般大衆の人気と気まぐれによって左右される事業です。そういう点で、当時の対応は「人の噂も75日」という本来ならば短期間で終息するはずの食品不祥事の問題をこじらせてしまったように思えます。

 こういう局面では、会社の評判を落とすようなことを防ぎ、耐えるしかありません。それが15年のマクドナルドであったように思われます。

 では、そのようなマクドナルドがなぜ黒字化すると推測されるのでしょうか。理由は以下の3つです。

黒字化する根拠(1):既存店の売上高の回復

 16年の日本マクドナルドにおいては、既存店の売上高に回復の兆しが見受けられます。1月の既存店売上高は、対前年比で35%上昇しました。もっとも、昨年1月には異物混入騒ぎがあり、対前年比で売上高が38%も減少となりました。

 仮に14年1月の既存店売上高を100とすれば、15年1月の売上高の水準は62{=100×(1-0.38)}程度の低水準です。これが16年に35%上昇したといっても、14年1月の売上高を100とすれば83.7の水準です。なぜなら、15年の売上高は14年の100に対して62であったので、この35%増といえば83.7(=62×1.35)だからです。

 したがって、14年1月との対比でみれば、今年1月の既存店売上高は16.3%の減少(=100-83.7)を意味します。

 しかし、たとえそうであったとしても、前年比35%増というのは、はっきりとした回復の兆しを示しているといえます。また、2月は前年比29.4%増になっており、やはり明確な回復の兆しが見えます。

 こうして、長く不調が続いたマクドナルドでは、16年に入って不調が解消する兆しが見えてきました。これが、16年にマクドナルドの黒字化が期待できるひとつ目の理由です。

黒字化する根拠(2):不採算店舗の減少

 次に注目したい事柄は、15年においてマクドナルドが店舗数を減少させたことです。同年初には3093店あった店舗が15年末には、2956店にまで減っています。

 減少させた店舗の多くは、不採算店です。たとえば東京都内では、原宿表参道店、赤坂見附店、八重洲通り店、新宿大ガード西店などは立地に恵まれた店舗ではありましたが、その半面で家賃負担が重く、ほかの店舗に比べて損益分岐点の高い店舗でした。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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