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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

過去最悪決算の危機マック、実は今年必ず黒字化する理由…アベノミクスで逆風下に立った企業

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

 15年のマクドナルドは、そのような重荷になるような店舗を手放し、かなり身軽になりました。つまり、この1年間で黒字経営を実現するためのハードルを下げているのです。したがって、会社全体の売上高が下落しても、採算のとりやすい損益構造に転換されているはずです。これが、黒字化が可能だと判断した2つ目の要素です。

黒字化する根拠(3):為替の影響

 さらに16年に入ってからの為替の影響も重要です。マクドナルドは原材料の多くを輸入によって賄っていることもあり、これまで為替相場が円高になったときは業績を向上させ、円安になったときには業績を悪化させるということを繰り返しています。これを示したのが以下のグラフです。

過去最悪決算の危機マック、実は今年必ず黒字化する理由…アベノミクスで逆風下に立った企業の画像2

 まず、06年度は1ドル120円近い円安で推移しましたが、このときは経常利益が57億円の水準でした。これが07年度になると、いったん期の途中で1ドル120円台を超える円安となるものの後半は円高となり、1ドル110円程度にまで円が上がりました。このように円高に振れたことで07年度の経常利益は156億円となり、06年度の57億円を大きく上回る利益水準となりました。

 さらに08年度から11年度にかけては、1ドル110円から1ドル80円という超円高の水準を迎えますが、これに呼応するかのように経常利益は123億円(08年度)、232億円(09年度)、271億円(10年度)、276億円(11年度)と推移し、会社の最盛期を迎えます。
 
 ところが、12年の秋にいわゆるアベノミクスが始まると、同年度においては経常利益が237億円になり、日本マクドナルドは9年ぶりの減益となります。さらに、13年度、14年度と円が安くなるにつれ、業績の悪化が顕著になります。
 
 このように、マクドナルドは為替相場の影響を受けやすい企業であり、しかも円高が有利で円安が不利な会社であることがわかります。

 以前、100円マックという商品が発売されましたが、そのような果敢な商品戦略なども、1ドル80円程度の超円高の時期だからこそ採りえた戦法でした。したがって、15年のように1ドル120円程度の円安の状況においては、強気の戦略を採りえないのです。

 最近におけるマクドナルドの業績の急激な悪化には、前述した消費期限切れ食品の使用や異物混入のほかに、為替相場の変動が影響していることは紛れもありません。
 
 ここで、16年に入ってからの為替相場の動向をみてみると、年初には1ドル120円程度であったものが、本稿執筆時点(3月末)においては1ドル112円程度にまで円が高くなっています。このような円高に振れるという為替相場の変動は、マクドナルドの業績を押し上げるように作用します。

 以上3つの要因は、マクドナルドにとっては強力な追い風です。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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