筆頭株主のゼンショーはTOBに申し込まず、TOB後に行われた株式交換時にTOB価格と同額で持ち株を売り、スシローの経営から撤退した。スシローは、助っ人ユニゾンの手を借りて、天敵ゼンショーを追い払ったのである。
スシローをめぐるユニゾンとゼンショーの攻防戦には、双方の陣営に大手法律事務所のM&A専門弁護士が加わった。「オールスターでやるような案件ではないだろう」と法曹界をあきれさせるほど激しい争奪戦になった。
ホワイトナイトとして破格なリターンを得たユニゾン
ユニゾンはスシローに加藤智治氏を専務執行役員として送り込んだ。同氏はドイツ証券やマッキンゼーアンドカンパニーを経てユニゾン入りしたコンサルタントで、メディア戦略に長けていた。PR会社を積極的に活用し、牛丼の低価格戦争と対比させるように「回転ずし戦争」の実態をテレビや雑誌に売り込んだ。
その露出効果は絶大で、11年にはカッパ・クリエイトホールディングスが展開する「かっぱ寿司」を抜き去り、スシローは回転ずし業界の首位に立った。12年9月期には売上高1113億円を達成。一店舗当たりの売上高は年間3億3000万円で、同業の1.3~2倍という高い水準を誇った。
ユニゾンが掲げた「日本一、売上高1000億円」という目標は達成された。加藤氏が成功の立役者だった。当然のことだが、その後ユニゾンは資金の回収に入った。イグジット(ファンドが株を売却して投資を回収する出口)戦略としては3つ考えられた。再上場するか、事業会社に売却するか、新たなファンドに売却するかである。最終的にユニゾンはリターンが最も大きいファンドへの転売を選択した。
12年9月、ユニゾンが保有している全株式(81%)をペルミラに譲り渡し、スシローは英国企業となった。譲渡価格は約10億ドル(当時の為替レートで約786億円)で、単純に計算して541億円の売却益が出たことになる。ユニゾンはホワイトナイトとして破格の報酬を得た。
ペルミラが社長に送り込んだ元日本航空副社長
大枚をはたいてスシローを買ったペルミラは、スシローの再上場の際に、高値での売却を狙っているのはいうまでもない。そこで「2020年に売上高2000億円」の成長路線を選択した。
そのために、元日本航空副社長の水留浩一氏をスカウトした。水留氏は15年2月、スシローの社長に就任した。