Mizkan Holdings(ミツカンHD)は、長谷川研治社長兼最高執行責任者(COO)が「健康上の理由」により5月23日付で退任した。同氏は2014年5月、創業家以外から初めて社長に起用されたが、退任後は役員ではない参与になった。
当面は社長職を空席とし、専務と常務計4人で構成する「常務会」を新設した。中埜和英会長兼最高経営責任者(CEO)の次女の中埜聖子専務が議長に就き、集団指導体制を敷く。聖子氏に常務会で経営の経験を積ませて、次期社長へ就ける布石と受け取る向きが多い。聖子氏は01年甲南大学経済学部卒業後、ミツカングループ本社(現ミツカンHD)に入社し、14年5月に専務となった。
パスタソース事業に社運を賭ける
ミツカンHDは江戸時代後期の1804年創業の老舗食品メーカー。祖業である酢を中心に「味ぽん」や「追いがつおつゆ」などのブランドで知られる。看板商品の「味ぽん」は、ぽん酢市場で6割前後のシェアを握る。
ミツカンHDが大きく変身したのは2014年だ。3月にグループ統括会社をミツカングループ本社から現在の社名に変更。日本を含むアジア、北米、欧州にそれぞれ統括会社を置いた。同年5月16日には創業家以外から初となる長谷川氏を社長に起用した。聖子氏が専務に昇格したのはこの時だ。
さらに同年5月22日、英オランダ系の食品大手、ユニリーバのパスタソース事業を買収すると発表した。買収額は21億5000万ドル(約2150億円)。買収するのは北米を中心に展開するパスタソースの「ラグー」「ベルトーリ」の2ブランドと、米国にある2工場。2300億円とされる北米の家庭用パスタソース市場で2つのブランドは33%のシェアを持っていた。
記者会見した中埜氏は、「合従連衡が進む世界の食品市場ではナンバー1、ナンバー2のブランドでないと生き残りは難しい」と語った。これが、年商(14年2月期は1642億円)を大きく上回る金額の大型買収を決断した理由だ。
ミツカンHDは人口減で国内需要が伸び悩むなか、海外市場での成長を目指す。11年には米国のチリソース製造会社、12年には英食品メーカーから酢やピクルスなどの事業を買収した。その延長線上で社運を賭けてユニリーバのパスタソース事業を買収したのである。
のれん代が収益を圧迫
大型買収の成果はどうか。ミツカンHDは非上場会社のため、詳細な財務データは開示していない。簡単な決算概要を公表しているだけだ。