千円超で「安くない」コメダ、異常な心地良さの謎…店員が客に勝ってしまうスタバと真逆戦略
こうした取り組みは、特に都心ではなく地方の郊外型店で真価を発揮する。満員電車に乗って通勤する都心の会社員とは違い、地方では自動車通勤も多い。たとえば工場勤務をしている人なら、スーツ姿ではなくカジュアルな格好でクルマに乗って出勤し、会社に着くと作業服に着替える。そうした人の立ち寄り先として、コメダのような店は使い勝手がいい。
「もともと、行くために着替えるようなハードルの高い店ではありません。実際に作業服のままで来られるお客さんもいますし、夜遅く(多くの店が23時)まで営業していますから、気軽に利用されやすいのです」(同)
つまり「普段使い」への訴求といえよう。筆者はスタバもときどき利用するが、地方の店であっても、スタイリッシュな服装の来店客が目立つ。スタバはそれなりに気合いを入れて行く店なのだ。こうした客層の違いはカフェの生活文化的にも興味深い。
独自の「間仕切り」と「新聞・雑誌の選び方」
学生の間で、スタバのアルバイトは人気が高い。決して時給が高いわけではないが、「グリーンエプロン」と呼ばれる制服姿は見た目にも華やかだ。一方、コメダの制服はスタイリッシュとはいえない。だが、これにも理由がある。「お客さんに勝たない」ためだ。これも気軽に利用してもらうための手法といえる。
読み放題の新聞や雑誌を置くのも、スタバやドトールにはないコメダの特徴だ。選別の基準については、「主要な新聞や雑誌を揃えつつ、店舗立地の特性を意識した構成」という。近くに幼稚園や保育園がある店舗では、子ども向けの絵本も揃えている。
特に地域性が現れるのが、スポーツ新聞だ。特にプロ野球のひいき球団は地域によって違うため、関西地方の店舗では阪神タイガース寄りの記事が多いデイリースポーツを複数揃える店もあり、今回、筆者が取材した愛知県の店では、中日スポーツが9部も置いてあった。愛知県内の中高年男性客は、中日ドラゴンズの結果に一喜一憂する人が多いためだ。
こうした新聞を読みながら飲食する座席は、間仕切り席も多い。決して個室にはしないが、座った時には他の席に座る人の視線が気にならず、立った時には間仕切りの高さに圧迫感がないようにしている。店によっては、最近多い1人客向けの簡易な間仕切り席がある。