千円超で「安くない」コメダ、異常な心地良さの謎…店員が客に勝ってしまうスタバと真逆戦略
ちなみにコメダの来店客の年齢構成は、20代以下(27%)と60代以上(28%)が多いという(15年9月・同社調べ)。20代以下には家族と一緒に来る未成年も多く、成長すると友人と来る人もいる。若い世代はネットニュースで情報を得る人が多いが、年配世代は紙の新聞に親しみを持つ人が多い。それもまた来店客の居心地へとつながっている。
また、店のメニューにも「舌をかみそうな商品名」はない。これから需要の増えるホットドリンクを例にとると、ブレンドコーヒー、アメリカンコーヒー、カフェオーレ、紅茶(レモン、ミルク、ストレート)、ココアといった内容だ。フードメニューもミックスサンド、カツサンド、ハンバーガーといった、昭和時代に定着した名前のままにしている。こうしたわかりやすさも、年配客や家族客に支持される理由のひとつだ。
「デフレ時代」に店を増やせる理由
少し引いた視点で、最近の消費者の外食店の使い方を見ると、デフレ時代に戻った感がある。大手外食チェーンもそれを見越した訴求をしており、マクドナルドは今年9月12日から平日昼限定で「400円のバリューランチ」を投入した。4月に吉野家が4年ぶりに販売再開した「330円の豚丼(並盛)」は、発売から6カ月で累計販売数2000万食を突破した。
一方、コメダの各店ではドリンクとフードを注文すると、多くのメニューで1000円を超えてしまう。デフレ再来ともいえるご時世に、格安とはいえない価格で店舗数を増やせる理由は何か。最も大きいのは、「地域の社交場としての役割」が評価されているのだろう。たとえば、8月10日に開業した「東札幌5条店」で取材すると、こんな声を聞いた。
「普通の喫茶店でこんなに遅くまでやっている店はないでしょう。知人も誘いやすいし、朝早くから営業しているので、今度はモーニングを食べに来ようと思っています」(近くに住む60代の女性)
かつて喫茶店が店舗数を拡大した時代があった。最盛期は1981年で、15万4630店を数えたが、2014年には6万9977店(カフェを含む)まで減った(総務省統計局「経済センサス」調査)。そんな時代にコメダが店舗数を伸ばせるのは、喫茶店への愛着や必要性だろう。総じて日本の消費者は「喫茶店やカフェで思い思いに過ごす」のが好きなのだ。