超一流米大リーガーから人気殺到!たった数人の野球用品メーカー、超低コスト宣伝戦略
海外のインスタでは思わぬ波及効果も出た。当初、新商品や注目商品の写真と簡単な説明文を添えて発信したところ、海外の愛用者や同社のファンがコメントを付けて英語で拡散してくれたのだ。それにより認知度も高まり、国内のフェイスブックと合わせて、ネット経由で注文が多数入るようになった。
同社は、有名選手には用具のみを無償提供し、マイナー選手やアマチュア選手には有償で買ってもらうのがビジネスモデルだ。価格は商品によって異なるが、打者用防具は上下(アームガードとフットガード)セットで約200ドル(約2万2000円)。だが、評判を聞きつけた有名選手がネット通販で買うこともあるという。
「MLBの有名選手のなかには、気に入ってくれると契約更改時に『あのメーカーの商品を使いたい』と代理人を通じて交渉してくれる例もあるようです。そうなると翌年以降は球団から注文が来ることもあります」(同)
これも、従来のスポーツ用品メーカーとは異なる販売促進といえよう。
「契約の壁」で使用できない選手も
日本のプロ野球界でも同社商品を愛用する例は多い。たとえばダヤン・ビシエド選手(中日ドラゴンズ)、サビエル・バティスタ選手、アレハンドロ・メヒア選手(ともに広島東洋カープ)、エルネスト・メヒア選手(埼玉西武ライオンズ)、ステフェン・ロメロ選手(オリックスバファローズ)、ロエル・サントス選手(千葉ロッテマリーンズ)らだ。
こう紹介すると、外国人選手ばかりなのに気づくだろう。実は、日本のプロ野球では、大手メーカーと専属契約する日本人の有名選手が、それ以外のメーカー商品を使うのは難しい。以前、首位打者も獲得した日本人選手が同社の防具に興味を持ち、依頼を受けて防具を提供したが、専属契約がカベとなり同選手はその防具を試合で使えなかった。
長年、プロ野球の周辺取材をしていると、関係者から「日本人の有名選手は無料用具提供に慣れすぎて、ビジネス常識からかけ離れた選手も目立つ」という苦々しい声も聞く。
「たとえば、グローブを年に十数個、用具メーカーに無償提供を求める選手もいます。かつてセ・リーグ人気球団で有名だった選手(現在は引退)は、新しいスパイクを数日に1足、無償提供を求めていました。いくらなんでも、練習でそんなにツブすケースはありません。多くは新品をタニマチ(支援者)にサインして配っているのです」(業界関係者)