超一流米大リーガーから人気殺到!たった数人の野球用品メーカー、超低コスト宣伝戦略
もちろん、支援してくれる人あってのプロ選手なので、新品にサインして配るのは問題ない。関係者が声を潜めて言うのは「一流選手は高額な報酬を得ているのだから、たまには用具を自分で買ってはどうか」という思いだ。どんな分野でもそうだが、無料で手に入れた商品よりも、身銭を切って手に入れた商品のほうが、大切に向き合う。
各企業には個別の事情があるので軽々しく論じにくいが、一方で地道に活動してきた中小の野球用具メーカーが苦境に陥っている例も耳にする。ベルガードも一度倒産し、現在の会社は永井氏が立ち上げた継続会社だ。野球業界全体の健全な発展のために「意識を改める部分は改め、団結できるところは団結していかないと」と思う。
話題の「コラボ商品」も開発
ベルガードの活動に話を戻そう。メディアを通じて認知度が高まった同社には、コラボレーションの依頼も入るようになった。ただし、もともと職人気質ゆえ、話題性中心のオファーには乗らずに対応しているという。
現在、同社がもっとも注力するのは、“パワーを生むウエア”とのコラボ商品「AXF×Belgard」(アクセフ・ベルガード)だ。こう記すとウサンくさいが、装着すると「リカバリー」「バランス」「推進力」が向上する機能性衣料の一種だ。IFMC.(イフミック=集積機能性ミネラル結晶体)として特許出願中だという。リカバリー面でいえば、筆者は“リカバリーウエア”の取材経験もあるが、最近はマッサージなどによる疲労回復ではなく「着て疲労を回復する」市場が拡大している。
今回のコラボは、永井氏の出演番組を観た岐阜市の衣料メーカー、サンフォードから話があり、社長同士が旧知の仲で機能性でも連携していた、大阪市のテイコク製薬社(高齢者の転倒防止ベルトなども製作)との共同開発だという。
実際の機能性は新商品を試着した人に判断してもらうしかないが、永井氏が番組出演時に会った出演者仲間(元プロ野球選手もいた)や番組スタッフ(元六大学アメリカンフットボール部出身)が試着し、好評を得ているようだ。ただし、まだ「お墨付き」とまではいかない。
「新商品の評判は上々ですが、今後は良識ある研究者や第三者機関の評価など、エビデンス(根拠)を充実させるのが課題です」(同)
ビジネス環境が一気に変わる時代。技術が優れた会社でも苦境に陥り、倒産に追い込まれる例は目立つ。一方で環境変化の波に乗り、注目を集める同社のような事例もある。その違いは何か。本連載でも時々記しているが、「あきらめずに動き続け、情報を入手する」姿勢も大切だ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)