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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

天才カメラマン・永井浩は、一度も被写体に「笑ってください」と言ったことがない

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

編集者からカメラマンに転身

 出版系のフリーカメラマンの経歴や前歴は多種多様だが、以下のケースが一般的だ。

・撮影スタジオに勤務して撮影数をこなした上で独立
・カメラマンのアシスタントを経て独立
・出版社の社員カメラマン(社カメ)を経て独立
・最初からフリーで仕事を開始

 このうち、アシスタント出身は “徒弟制度”が崩れた現在は少なくなっている。学校歴もさまざまだ。かつては写真学科のある東京工芸大学や日本大学芸術学部出身者が多かったが、最近は一般大学の学部卒も多く、女性も増えた。もちろん学歴は問われないので、大学卒でなくても活躍する人はいる。そんななかでも、永井氏は異質といえる。出身校は早稲田大学政治経済学部で、政治家を多数輩出した雄弁会出身。カメラマンになる前は編集者だった。

「新卒でシニア向け雑誌『いきいき』(現『ハルメク』)などを出すユーリーグ(現社名はハルメク)に就職しました。ベンチャー企業だったので、編集作業以外に写真も撮れば、広告の版下も制作した。制作予算が限られていたので外注せず、内製化したのです。採否は当時の社長と編集長が出来栄えを見て即決。そのおかげで鍛えられました」(同)

 寄席や地酒、クラシック、バレエなどに詳しい永井氏は、写真の構図については、予算が潤沢にあった時代の雑誌「別冊太陽」(平凡社)などを見て研究したという。出版社を辞めて独立する際に、それまでの写真をまとめたブックを作成。20社ほどの出版社を回って営業した。その写真に興味を持った各社から依頼が来て、仕事につながったという。最初の1年は編集業も兼ねていたが、現在は撮影専門。月平均で20件弱の仕事をこなす。

ボクシング「ザ・おやじファイト」に参戦中

天才カメラマン・永井浩は、一度も被写体に「笑ってください」と言ったことがないの画像3「ザ・おやじファイト」の試合に臨む永井氏

 忙しい日々を送る永井氏だが、もうひとつの顔がある。30代半ば以降対象の「ザ・おやじファイト」(以下、OFB)に参戦する現役ボクサーなのだ。

 OFBとは、特例がない限りプロのライセンスも37歳で失効するなど年齢制限のあるボクシングに、練習の成果を披露する舞台をつくる――という目的で設定された。中年向けなので、安全面に気を遣う。当初は3分×2ラウンドだった試合時間を、スタミナ不足でのケガ予防も考慮して、2分×3ラウンドに変更されたという。

「ボクシングを始めたのは2つ理由があります。ひとつは、私生活で離婚して子供に会えなくなった時期に、何か没頭するものを始めようという思い。もうひとつは体力づくりです。カメラマンは重い機材を運ぶので、いつまでも耐えられる肉体に改造しようと思いました」(同)

 瞬時の運動神経が求められるボクシングで、頭脳が肥大化しないよう心がけているそうだ。永井氏の言葉を借りると「インテリジェンス的な感性を写真には持ち込まない」ということだ。ボクシングを始める前は90kg以上あった体重を、61.6kgまで減量した。顔つきも精悍になり、腹筋もきれいに割れた。試合は勝つこともあれば負けることもある。仕事に影響もなく、精神的なバランス効果が大きいようだ。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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