株式市場はオアシスの提案を好感した。株価は11月8日の終値1628円から翌9日には年初来高値の1838円を記録。その後も株価は上昇し、12月27日には2418円の年初来高値を更新した。大納会の12月29日の終値は2287円だった。オアシスの提案以前に比べると、40%も株価が上昇したことになる。オアシスの経営改善策が実を上げることへの期待値が高い証拠だ。
その後も、1月12日の業績上方修正を受けて株価は上昇した。週明けの15日には、一時、前週末比16%(353円)高の2622円まで跳ねた。株式分割を考慮すると、実質的に上場来高値である。
予想PER(株価収益率)は94倍。業界最大手のリクルートホールディングス(38倍)などと比べると割高である。株価が右肩上がりのうちはいいが、下降局面に入ると“オアシスの提言”が重石になる。
収益力回復への圧力は、確実に高まっている。しかし、南部氏は自己流の経営手法を改めるつもりはなさそうだ。南部氏は直接分39.59%、間接分11.68%を合わせると51.27%を保有する支配株主だ(17年5月末時点)。他の株主が束になっても敵わない。
そうすると、オアシスは具体的にどんな手を打つだろうか。17年12月21日、パソナのグループ会社の取締役会議事録の閲覧許可を東京地裁に申し立てた。「グループ内取引の実態を明らかにし、ガバナンスに関する重大な問題点を把握する」のが狙いだ。
南部氏は、政界に太いパイプを持つ“平成の政商”と呼ばれる人物だ。小泉純一郎政権で経済産業相を務め、人材派遣業界の規制緩和を主導した竹中平蔵氏を09年に会長に迎え入れた。
オアシスがターゲットに定めたのは、この竹中氏だ。同氏は現在、慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授を務める経済学者で、コーポレート・ガバナンス強化の推進論者として知られている。フィッシャー氏は、前出・日経新聞のインタビューで、竹中氏の存在と、今回の提案との関係を問われ、こう答えている。
「パソナは南部代表が約4割の株式を保有しており、我々が十分な議決権を得るのは難しい。竹中会長はじめ取締役会メンバーはコーポレート・ガバナンス・コード(企業統治指針)に従って会社の統治構造を改善する義務がある」
オアシスからボールは竹中氏に向けて投げられた。果たして、竹中氏は南部氏に忠誠を尽くすのか、それとも経済学者としてコーポレート・ガバナンスの必要性を貫くのか。
(文=編集部)