ローソン、「待ちカフェ」と揶揄されても、やめない理由…「意外な効果」創出?
そもそも“セルフサービス”とは
セルフサービスは、世界初のスーパーマーケットといわれ世界恐慌の直後あたりにオープンした米キングカレンが始めたとされています。それまでは、商店街の個人商店のように対面販売が主流で、お店側がすべての作業をまかなってくれたわけですが、スーパーでは入り口にカゴが置いてあり、客自ら商品を探してレジに行きなさいということで、今では当たり前でも、当時は「なんと失礼な!」と怒る客もいたことでしょう。
それが近年ではファミリーレストランのドリンクバーなど、セルフのほうが店員に頼むより気楽でいいと、特に若者には人気のようです。もっとも、年配の方のなかには、こうしたサービスを不快に思う人が多いかもしれません。
ただ、今回のローソンの事例を通じて、時代の変化といいましょうか、もともと単に人件費の削減のみを目的に始まったセルフサービスが、今や気楽でいい、つまり逆に“良いサービス”になるという皮肉なことが起こっているわけです。
確かに、コンビニに消費者が求める主要な要素に「短時間での買い物」があることは事実でしょう。しかしながら、ローソンが目指す、「手渡しによる客との交流」は、同質化が激しいコンビニ業界において、大変興味深いテーマだと思います。これは単に客に対してではなく、働くスタッフにも良い影響を与える可能性があります。
コンビニ勤務は必ずしも人気があるとはいえず、多くのコンビニにおいて求人活動が難航していますが、客との交流が保たれるコンビニならば、スタッフ集めにおける差別化も実現できるかもしれません。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)