鈴木貴博「経済を読む目玉」

「社員の年収5百万、社長は2500万、株主は1億」が許される合理的理由はない

虚構の上に成り立つ日本経済

 とはいえ、それでも人類社会は今でも虚構の上で成り立っている。日本経済も同じである。「景気は循環する」「投資は全体で見ればリターンが返ってくるものだ」「インフレは経済を発展させるのでむしろいいことだ」「円安になると日本経済は息を吹き返す」といった考えは日本人全体に広まっていて、皆がこのことを信じて経済活動を行っている。

 さらには「年金は若い頃きちんと支払っていれば老後に損をすることはない」「公共投資は不況対策として有効だ」「国債は安全資産である」、そして「日本円は紙くずではない」といった思想を皆信じて、税金や年金を国にゆだねて信じて生活を続けている。

 繰り返しになるが経済とは基本的に「虚構を信じるという人類特有の能力の上に築かれている仕組み」である。だからこそ一見おかしな状況も誰も疑念を抱かず経済は今日もまわっている。これまでもそうだったように、これから先も虚構が崩れ、人類が新しい思想を信じるように変わるという出来事は何度も起きていくだろう。とはいえ私が生きている間には、あまり大きな虚構崩壊は起きてほしくないと思う次第である。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

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