回転ずし店は1990年代まで牛丼店やハンバーガー店と同様、個人客を狙った駅前の小型店が中心だった。2000年代に入ると、大手はボックス席中心の郊外大型店を展開し急成長した。市場規模は5000億円と推計されており、6000~7000億円とされるハンバーガー業界に迫る勢いだ。
デフレの申し子といわれた企業群が、いずれも苦闘している。価格戦略は値上げと値下げに大きく分かれた。
マクドナルドは値上げした。2005年に始まった100円マックは“ワンコイン商品”の先駆けとなり、デフレの代名詞ともなった。その日本マクドナルドホールディングス(原田泳幸会長兼社長)は5月から100円バーガーを120円に値上げした。「増税と同時に値上げすれば、消費は冷え込む」とみて、円安による食材の輸入価格の上昇を理由に、先手を打って値上げに踏み切った。100円マックが消えたのは寂しい。
マクドナルドは6月24日に、これまでで最も高い値段となるハンバーガーの新製品「クォーターパウンダーBLT」(520~570円、地域によって異なる)を夏季限定で発売した。これまでは480~490円が最高。通常のハンバーガーの2.5倍の肉を使い、焼いたベーコンやレタスを挟んだ。ドリンクとフライドポテトを組み合わせたセット価格は830~870円となる。原田会長兼社長は新製品発表の記者会見で「値段を下げたことで、商品価値も下がったことは反省点」と述べ、低価格を売り物にしてきた従来の路線を、しらっと否定してみせた。
牛丼の吉野家ホールディングス(河村泰貴社長)は値下げ組だ。4月から牛丼「並盛」の定価を380円から280円へと100円値下げした。ライバルの「すき家」(ゼンショーホールディングス、小川賢太郎会長兼社長が運営)、「松屋」(松屋フーズ、緑川源治社長が運営)との低価格路線に距離を置いてきたが、一転して参戦した。「来店客数が3割増えれば、売上高は2割増える」と読んで薄利多売に舵を切った。
吉野家の4月の既存店の客数は前年同月比で13.6%増え、売上高は同11.1%増となった。既存店の売り上げが前年実績を上回るのは、実に7カ月ぶりのことだ。
デフレの申し子の代表選手は家電量販店である。家電エコポイント制度と地上デジタル放送移行に伴う需要の先食いの反動で、薄型テレビが極度の販売不振に陥り、氷河期に突入した。
最大手のヤマダ電機は、創業者の山田昇会長が6月27日付で社長に復帰。一宮忠男社長が副社長になるのをはじめ、全役員が1階級、格下げとなる。異例の全役員の降格で、難局を乗り切る構えだ。
ヤマダは中国事業の読みも誤った。沖縄県・尖閣諸島問題による日中関係の悪化を引き金に日本製品の買い控えが起こった影響から、12年3月にオープンしたばかりの中国・南京の大型店を5月末に閉鎖した。天津店は6月中に閉めた。瀋陽店は当面、営業を続けるが、サプライチェーンの構築が思うように進まないことから、積極的に出店する方針だった中国市場は、抜本的な見直しを迫られ、今後、東南アジアに軸足を移す。