心配なのは、レバレッジド・ローン市場に大量の資金を投入しているのが日本の銀行であるということである(12月17日付ブルームバーグ)。UBSによれば、日本の銀行は最上級のトリプルA格付けのCLOを購入しているが、過去数年でこのアセットクラスに流入した資金のうち、日本の銀行が33%を占めているという。
リーマンショックの引き金となったサブプライム関連金融商品にさほど手を付けなかったことから、日本の銀行は比較的ダメージが少なかったが、今後米国の金融市場で危機が生じれば、最も打撃を受けるのは日本の銀行かもしれない。
来年、世界経済は景気後退入りか
今後の事態については予断を許さないが、その鍵を握るのは原油価格であることは間違いない。国際金融市場の不調もあいまって50ドル割れの原油価格が続けばシェール企業の大量倒産が再び生じ、ジャンク債市場とリスク性の高いローン(レバレッジド・ローン)の分野でのさらなる混乱が広がりかねないからである。
弱気入りした原油市場では「強気材料」よりも「弱気材料」に反応しやすくなっている。12月13日付けロイターは『2019年経済展望、何でもありの「ブラックスワン」』と題するコラムを掲載した。そのなかで「原油(価格)は極めてもろく、(1バレル=)20ドルになる確率の方が急なリバウンドの確率より高い」としているが、チャート分析によれば、原油価格は今後1バレル=30ドル台前半まで下落する可能性がある(リーマンショック後の2009年3月の原油価格は同33ドルまで急落した)。
12月に入りCTA(アルゴリズム取引)が数次にわたって大幅な原油安を引き起こしているが、来年1月にメイ首相のEU離脱案の議会採決が「否決」という結果となれば、CTAにとって格好の売り材料になるだろう。
米国のS&P500種株価指数の下落ぶりは、2007年時点に類似しているとの指摘がある(12月20日付ZeroHedge)が、原油価格が今後短期間に30ドル台まで急落すれば、S&P500種株価指数も「つるべ落とし」となり、リーマンショック時のような大規模な株価暴落が起きない保証はない。
現在の世界経済は金融主導であることから、原油価格の下落による個人消費へのプラスの影響よりも株価急落による逆資産効果というマイナスの影響のほうがはるかに大きい。原油価格急落が金融危機の引き金になるかどうかは不明だが、世界の株式市場が軒並み低調となれば、来年の世界経済は景気後退入りするのではないだろうか。
(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)