奇跡のサバ缶「金華さば」、日本中から注文殺到の秘密…売上が工場流失の震災前を大幅超え
マツコが絶賛した「金華さば」缶詰
1957年に木村實氏(故人)が創業した木の屋石巻水産は、当時の日本人の貴重なタンパク源だったクジラ肉などを取り扱い、事業が成長した。現在は、石巻港や女川港に水揚げされたサバやサンマやイワシなどの魚介類を、鮮魚のまま缶詰に加工する「フレッシュパック製法」で知られる。味は、魚や鯨の特徴に合わせて水煮、醤油煮、味噌煮、大和煮などにする。だが、震災前は「地元では知られたメーカー」という位置づけだった。
それが震災で注目された結果、メディア露出が増え、売り上げも拡大した。現在は、木の屋ホールディングスの木村長努社長や木村隆之副社長(2代目の兄弟)が登場することもあれば、商品が脚光を浴びることもある。たとえば2017年12月5日に放送された『マツコの知らない世界』(TBS系)では「サバの缶詰」が取り上げられ、多くの商品が紹介された。そのトリを飾ったのが、木の屋の「金華さば」(味噌煮)だった。
「サバは苦手」と公言していたマツコ・デラックスも、次々に登場するサバ缶に「私の情報古すぎたわ、おいしくなったのね」と認識を改め、金華さばを口にすると「これは美味しいです。爽やかな感じの味噌ね。どちらかというと日本酒とこれだけでいきたいぐらい美味しい。ものすごく上品な(味)」と話した。番組の放映直後から、同社にはネット注文が殺到した。
「当日のうちに当社のPCサーバーが一時ダウンしたほどです。結局、1年分の在庫の3分の2が売れました」と木村社長は明かす。地方の缶詰メーカーが、サバ缶ブームの追い風にも乗ったのだ。ほかのサンマ缶やクジラ缶などの販売も好調で、18年9月期の売上高は約21億円となり、東日本大震災前の売上高(約15億円)を大幅に超えた。
新たな「缶詰の食べ方」を訴求
近年は、缶詰を使った料理を「木の屋の缶詰ごはん」として発信する。こちらはフードスタイリストとして、テレビ・映画・出版などで活躍する飯島奈美氏がメニューを考案した。
たとえば、パーティー用では「小女子(こうなご)と大根のサラダ」「まぐろの尾肉のバゲットピザ」「いわしみそ煮とブロッコリーの巣ごもりエッグ」などを紹介。いつものごはん用には、「鯨の大和煮あんの卵焼き」「さば缶ごはんの手巻き寿司」といった料理のほか、「お弁当」メニューも訴求した。同社の公式サイトで見ることができる。