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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

奇跡のサバ缶「金華さば」、日本中から注文殺到の秘密…売上が工場流失の震災前を大幅超え

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

 東京都内にある「木の屋サロン」で、缶詰料理を披露することもある。筆者も今年7月、「クジラ肉の缶詰試食会」に参加した。参加者から「牛肉のような柔らかい味」という声が上がったのが、「長須鯨 須の子 大和煮」(通称・白缶)だ。 1缶150グラムで、価格は1080円(税込み)。須の子とは、アゴから胸にあたる部分で、よく脂がのった希少部位だ。担当編集者のひとりは「まったくクセがない。驚いた」と、興奮気味だった。

 缶詰といえば「保存食」のイメージが強いが、味はかなり進化した。消費者の意識も変わり、簡単・便利な食材として利用されている。

「クジラ肉」は今後どうなるか

奇跡のサバ缶「金華さば」、日本中から注文殺到の秘密…売上が工場流失の震災前を大幅超えの画像4「長須鯨 須の子 大和煮」。価格は1缶1080円(税込み。画像提供:木の屋)

 ところで、本稿執筆時に「日本がIWC(国際捕鯨委員会)脱退」というニュースが飛び込んで来た。脱退すれば、1987年に日本で禁止された商業捕鯨の再開をめざすことになる。

 実は、試食会で好評だった鯨缶の原材料は、長須鯨(ナガスクジラ)で、アイスランドやノルウェーなど商業捕鯨を行う国から輸入したクジラ肉だ。

「10年前は日本の調査捕鯨枠で、ナガスクジラは10頭の割り当てがありましたが、実際の捕獲数は3頭。すべて当社が仕入れて缶詰に加工していました。それが現在はゼロ。入手困難になり、商業捕鯨国のアイスランドから輸入しているわけです。一般に、鯨は脂分があるほうがおいしいといわれ、ナガスクジラは約10%でもっとも多いのです」(木村隆之副社長)

 クジラ肉は「健康機能性」の視点からも注目されている。たとえば、抗アレルギー肉としての魅力だ。「全員ではないが、食肉アレルギーの強い人でも食べられる」(関係者)という。

 認知症を改善する効果も見込まれている。星薬科大学の塩田清二特任教授と平林敬浩特任助教の発表によると、クジラ肉に多く含まれる「バレニン」を含む抽出物を、「物忘れが多くなった」と自覚する70~77歳の男女14人(うち非投与者7人)を対象に、12週間投与したところ、バレニン投与者のほうが認知機能などの計算テストのスコアが向上したという。

 もちろん、だからクジラ肉の消費拡大――という単純な話ではない。商業捕鯨の再開には多くの問題が横たわる。それでも魚缶・鯨缶への消費者意識の変化、クロマグロやウナギなど水産資源の枯渇問題がいわれるなかでの「鯨」の存在は、今後が注目されるのだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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