たとえば、「どんminiアリオ鷲宮店」(埼玉県久喜市)は1月6日に閉店したが、同店が入居していた商業施設には「いきなり!ステーキアリオ鷲宮店」(同)が入居している。昨年8月に閉店した「ステーキのどん大和店」(神奈川県大和市)は「いきなり!ステーキイオンモール座間店」(座間市)と「いきなり!ステーキアピタ長津田店」(横浜市)、「いきなり!ステーキ厚木林店」(厚木市)に囲まれ、それぞれ車で30分のところにあった。どちらのケースも、「いきなり!ステーキ」に客を奪われた側面が多分にあったと言っていいだろう。
アークミール事業の業績が悪化し始めた時期と「いきなり!ステーキ」が伸長した時期は重なる。同事業の売上高は16年2月期まで4期連続で増収を達成していたが、17年2月期は一転して前期比5.7%の減収となった。18年2月期も落ち込み、2.2%の減収となっている。アークミールで減収が続いた時期は「いきなり!ステーキ」が出店攻勢をかけていた時期と重なる。
「いきなり!ステーキ」の台頭で消えたステーキ店
ほかにも、「いきなり!ステーキ」の出店攻勢が一因で倒産に追い込まれたと思われるステーキ企業がある。
ステーキ店「KENNEDY(ケネディ)」を展開していたステークスだ。調査会社の東京商工リサーチによると、増加傾向にあったステークスの売上高は競争激化で落ち込むようになり、16年12月期まで2期連続で減収となったが、この時期は「いきなり!ステーキ」が台頭した時期だ。アークミールのステーキ店と同様、両者が近くに立地して競合するケースが少なくなかった。こういった競争に敗れたステークスは17年10月に東京地裁に破産を申請し、破産開始決定を受けることとなった。
ペッパーフードサービスが「いきなり!ステーキ」の出店攻勢を緩める気配は見られない。それどころか、国内1000店を目指すと宣言している。最近は客離れが起きていることもあり予断を許さないが、国内1000店の達成は十分あり得る話だ。そうなると、このままではアークミールはステークスのように破産に追い込まれないとも限らない。アークミール、吉野家HDにとって今が正念場で、早急に抜本的な「いきなり!ステーキ」対策を講じる必要があるといえるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。