大東建託がコインランドリー開業を支援…全国2.6万店の激戦、「アパートが建たない土地」でも勝てるか

●この記事のポイント
大東建託の100%子会社でLPガス事業を手がけるガスパルが、2026年10月からコインランドリーの開業支援事業を本格的に始めた。国内市場は約1155億円・2万6000店に拡大する一方、競争は激しい。アパートに向かない土地の活用とLPガス需要の拡大という二つの狙い、小型店でも2000万円超かかる初期費用などのリスクを、直営11店舗の経緯とともに解説する。
賃貸住宅大手・大東建託のグループ会社が、コインランドリー事業の”裏方”に乗り出した。
LPガス供給を手がける100%子会社のガスパルは9月28日、土地・建物のオーナーや事業者を対象に、機器販売から開業・運営支援までを一括で請け負う「コインランドリープロデュース事業」への参入を発表。10月から本格的な受注活動に入った。
管理戸数で国内最大級の賃貸住宅グループが、なぜいまコインランドリーなのか。狙いは大きく二つある。駅から遠い、形がいびつといった理由でアパート建築を提案しにくい土地に、新たな活用策を示すこと。もう一つは、乾燥機の燃料として大量のガスを使うコインランドリーを通じ、グループのLPガス事業の需要を広げることだ。ただし市場はすでに全国2万6000店規模に達し、競争は年々厳しくなっている。
●目次
「単身者の洗濯場」から「家事の外注先」へ
経済産業省の研究会報告書によると、2025年の国内コインランドリー市場は約1155億円、店舗数はおよそ2万6000店に達した。クリーニング店などを含む関連市場全体は横ばいからやや縮小の局面にあり、矢野経済研究所の調べでは2025年は前年比99.6%の約2800億円だった。そのなかでコインランドリーは、数少ない伸びしろのある分野といえる。
利用者の顔ぶれも変わった。かつては洗濯機を持たない単身者や学生の施設という印象が強かった。いま郊外の駐車場付き店舗で目につくのは、週末に1週間分をまとめて持ち込む共働き世帯や、布団やラグを抱えた家族連れだ。
中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21が紹介する民間調査では、利用理由の最多は「自宅ではサイズや材質の問題で扱えない物も洗濯・乾燥できるから」で、45.5%を占めた。家庭用の洗濯機では回せない大物の需要が、市場の土台になっている。
店のつくりも様変わりした。キャッシュレス決済、スマートフォンで空き状況を確認できる仕組み、明るく清潔な内装。初めての人が足を踏み入れるハードルは、10年前と比べてかなり下がった。
「無人で儲かる」は半分だけ正しい
コインランドリーが投資対象として語られる理由ははっきりしている。無人営業が基本で人件費がほとんどかからない。料金は前払いなので、賃貸経営における家賃滞納のような未回収リスクもない。
一方で、初期費用は決して軽くない。業務用ランドリー機器メーカーのエレクトロラックス・プロフェッショナルの試算では、15〜20坪の小型店でも機器一式に1300万円以上、内外装などの工事費に700万円以上がかかり、合計2000万〜2500万円が目安になる。駐車場を備えた郊外の大型店なら、さらに膨らむ。
「同じ機器、同じ料金でも、立地が違えば売上はまったく別物になります。開業時は順調でも、数年後に近くへ大型の新店ができて客足が目に見えて落ちる例は珍しくありません。ガス・電気・水道をすべて使う業態なので、エネルギー価格の変動もそのまま利益に響く。開業前の収支計画を、どれだけ保守的に組めるかが分かれ目です」(経営コンサルタント・田辺晃成氏)
ガスパル自身も発表資料のなかで、店舗数の増加に伴い競争が進み、安定運営には専門的な知見や運営ノウハウの重要性が増していると認めている。裏を返せば、この「難しさ」こそが開業支援というビジネスの成立する余地だ。
狙い① アパートに向かない土地の受け皿
大東建託の本業は、土地オーナーに賃貸住宅の建築を提案し、完成後は一括で借り上げて管理する「賃貸経営受託システム」である。この仕組みの性質上、入居需要が見込みにくい土地は提案の対象から外れやすい。駅から遠い、間口が狭い、形がいびつ――。
コインランドリーの立地条件は、これとかなり違う。重視されるのは、車で立ち寄りやすいことと、周辺に生活圏があること。ガスパルが2021年9月に金沢市で開いた1号店の敷地は約20坪だった。アパート経営が成り立ちにくい小規模な土地でも、条件がそろえば事業化の道はある。
もっとも、この発想は今回が初めてではない。1号店開業時、業界紙の取材に対しグループは、大東建託がオーナーとの関係を生かし、業務用施設としての土地活用先として紹介していく方針を示していた。直営店「Orange Heart Laundry」(旧「いい部屋ランドリー」)は、大東建託が建てた建物にテナントとして入居する形で全国11店舗まで広げてきた。今回の新事業は、その運営経験をグループ外のオーナーにも開く一歩と読むのが自然だろう。
「地主さんとの商談で一番もったいないのは、『この土地ではアパートは難しいですね』で話が終わってしまうことです。別の選択肢を出せる会社は、関係を途切れさせずに済む。ただ、コインランドリーはオーナー自身が事業者になる形が基本で、建物を貸して家賃を受け取るのとはリスクの中身がまったく違う。そこを丁寧に説明できるかどうかで、提案の信頼性が決まると思います」(同)
なお、2021年の参入時には「2024年までに20店舗」という目標が掲げられていた。実際の出店は11店舗にとどまっており、量より運営の検証を優先してきたことがうかがえる。直営で得た成功と失敗の両方のデータを、今後の提案にどこまで反映できるかが問われる。
狙い② LPガス事業との相性
もう一つの見どころは、事業の担い手がLPガス会社だという点だ。コインランドリーの大型乾燥機はガス式が主流で、ガスパルの直営店もLPガスを燃料としている。
ガスパルの2026年3月期の売上高は443億7600万円。大東建託グループが管理する賃貸住宅の入居者にガスを優先的に供給できるビジネスモデルを持ち、19期連続の増益を続けてきた。安定した顧客基盤がある半面、収益の柱が住宅向けLPガスに集中しているのも事実である。
今回の発表資料は、開業を支援した店舗へのガス供給には触れていない。ただ、事業の組み立てを考えれば、両者を結びつける発想が出てくるのは自然だ。
「住宅向けのLPガスは、給湯器など機器の高効率化や世帯人数の減少もあって、1件あたりの使用量が伸びにくい事業です。乾燥機を何台も動かすコインランドリーは、ガス会社から見ればまとまった需要が見込める顧客になる。需要先を自分たちで生み出す仕組みとして、理にかなっています。加えてLPガスは各拠点にボンベやタンクで置く分散型のエネルギーなので、災害時の強さを打ち出しやすい点も見逃せません」(同)
実際、ガスパルの1号店は災害時の一時避難所として機能する「災害対応型店舗」として設計され、断水時に使える2.5トンの貯水槽を備えた。日常の家事インフラと非常時の拠点を兼ねる考え方は、グループが掲げる防災まちづくりの方向性とも重なる。
「第3の選択肢」になれるか
大東建託グループの今回の動きは、土地オーナーへの提案の幅を広げる営業上の意味と、グループのエネルギー事業の需要を育てる意味、その両面を持つ合理的な一手といえる。アパート、駐車場に続く土地活用の選択肢として定着するかどうかは、これからの実績次第だ。
オーナー側の立場で見るなら、確認しておきたい点は3つある。収支計画が競合出店や光熱費上昇まで織り込んだ保守的なものになっているか。商圏内の既存店の状況を具体的に示してもらえるか。そして、開業後の運営改善の支援がどの範囲で、いつまで続くのか。
市場が拡大から選別の段階に移りつつあるいま、問われるのは「始められるか」ではなく「続けられるか」である。直営店で5年間現場を回してきた経験が、オーナーにとってどれだけ具体的な判断材料になるのか。その中身に注目したい。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田辺晃成/経営コンサルタント)
【主な参照データ・出典】
ガスパル「コインランドリープロデュース事業」参入(PR TIMES, 2026年9月28日)
ガスパル ニュースリリース
ガスパル、コインランドリー事業を開始(大東建託, 2021年)
ガスパル 事業概要
石油ガス・ジャーナル 第1729号
週刊不動産経営
J-Net21 コインランドリー
矢野経済研究所 2026クリーニング関連市場総覧
エレクトロラックス・プロフェッショナル
マイナビ2028 ガスパル会社概要











