あまり注目されていないが、5月下旬に以下の報道があった。
国土交通省は21日、道路や港湾などのインフラの寿命を延ばすための行動計画を発表した。国や地方自治体が抱えるインフラの適切な維持管理に役立てる。道路は5年に1度、ダムは3年に1度など、施設ごとに定期的な点検を求め、データベースの整備や新技術の導入なども促す。国や都道府県、市町村が地域単位で協議会をつくり、インフラの維持管理で協力するよう求める。(5月21日付日本経済新聞電子版記事『インフラ長寿命化計画を発表 国交省』より抜粋)
この「インフラ長寿命化計画」は重要である。なぜならば、高速道路等のインフラは物流の根幹で、今後は戦略的投資が不可欠になるためである。そして、戦略的投資が不可欠となる理由は以下の通りである。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、現在約1.3億人の日本の人口は、2082年に半減する。すでに人口減少は始まっているが、本格化はこれからである。
標準的な経済学の理論では、中長期的な経済成長を決める要因は3つある。それは、科学技術を含む「技術進歩」、「労働力」、そして、高速道路等のインフラを含む「資本蓄積」の3つである。メディアで人口減少をテーマに扱う場合、経済成長に関する議論で話題となるのは通常、「労働力」である。つまり、「労働力が減少する中、労働生産性を高めつつ、女性・高齢者や外国人材の労働力も積極的に活用していくべき」といった議論である。だが、老朽化が著しい首都高をはじめ、道路等の公共インフラを含む「資本蓄積」に関する議論も重要である。
日本では高度成長期を含む1950-60年代に本格的な公共インフラ整備がスタートしたが、耐用年数を50年とすると、2010年代から老朽化が急速に顕在化するからである。実際、数年前(12年12月)には、1977年の開通から35年が経過した「笹子トンネル」の崩落事故が起こったことは記憶に新しい。
このような事故は日本が初めてではない。例えば、アメリカも1980年代に公共インフラの老朽化に直面し、83年にコネティカット州マイアナス橋が落橋する等の事故が起こった。20-30年代のニューディール政策で構築された公共インフラの多くがその耐用年数を過ぎ、老朽化したからである。公共インフラの維持更新に関する問題は、現在のアメリカでも継続しているが、日本は20-30年遅れて直面したのに過ぎない。
●求められる、老朽インフラの維持更新に関する選別基準策定
ではどうするか。むしろ問題は、先進国の教訓や事例を参考にしつつ、公共インフラの維持更新をどのような戦略や基準で進めていくかである。その際、人口減少が引き起こす要因は無視できない。国土審議会政策部会の「国土の長期展望」中間とりまとめ(11年2月)によると、現在の居住地域の約2割の地域が「無居住化」することが予測されている。他方、三大都市圏(東京、名古屋、大阪)の人口が全人口に占める比率は、10年の50.9%から50年には56.7%と上昇することが予測されている。