ビジネスジャーナル > 企業ニュース > マック崩壊招いた組織破壊と人材放逐  > 3ページ目
NEW
中村芳平「よくわかる外食戦争」

マック崩壊を招いた、組織破壊と優秀な人材の放逐 FCから反発噴出で集団離反の恐れも

文=中村芳平/外食ジャーナリスト

FCオーナーたちの怒り爆発

 
 日本マクドナルドは14年7月に発覚した期限切れ鶏肉問題に端を発し、異物混入問題が相次ぎFC店は売上高を激減させた。カサノバ氏はロイヤルティーの一律減額に踏み切るなど、FC支援対策として30億円を投入した。しかし、日本マクドナルドは14年12月期決算で最終損益が218億円の赤字に陥るほど、業績が悪化した。これより先、日本マクドナルドはFCオーナーたちを集め14年秋以降の売り上げ目標を提出させ、署名させた。これにはFCオーナーたちが怒りを爆発させた。

 その中の一人である原島清司氏は、日本マクドナルドの社員時代を入れると30年以上店舗運営にかかわってきた。FCオーナーとして独立してからは、西多摩地区を中心に34店舗を展開する大物オーナーであった。FCオーナー会議に出席した原島氏は、壇上に居並ぶ経営幹部を見て、こう嘆いた。

「かつての藤田社長時代と比べると、販売の現場で働いたことがない人ばかりが経営幹部だ。マックはすっかり変わってしまった……」

 原島氏は、販売現場で働いたことのない人たちが経営幹部であることに違和感を持った。それは原島氏が知る日本マクドナルドではなく、異質の日本マクドナルドであった。原島氏は藤田時代の終焉を知り、FC34店舗の本社への売却を決めたのである。これは米本社主導で進める日本マクドナルドの脱・藤田路線にとって、ショッキングな出来事であった。対応を間違えればFCオーナーの集団離反にも発展しかねない、深刻な問題であったからだ。

 日本マクドナルドは、引き続き20億円規模のFC支援を決めた。FC店の平均月商は一説には1200~1300万円といわれているが、売り上げの激減で、月間売上高の計20%を占めるロイヤルティー、家賃などを払うと、やっていけないところが増えているといわれる。そこで日本マクドナルドではロイヤルティーの引き下げ、食材費の支払い3カ月先送りなどの対策を取ったうえで、「ランチ時間帯の午前11時~午後2時の売上高を取り戻す!」作戦を進めている。売上高伸び率(前月比)に応じて10段階に分け、0.3~2.3ポイント減額する。15年1月~6月末まで実施する計画だ。

 日本マクドナルドは今年1月、売上高が前年対比で38.6%も落ち込んだ。年間売上高予想などは先送りしているが、2~3月でも売り上げが回復しないと、FCの集団離反問題が再燃する可能性がありそうだ。

 カサノバ氏はマレーシアでチキンの商品戦略を大成功させ、ケンタッキーフライドチキンを緊張させたという武勇伝の持ち主である。カサノバ氏自身、「当社のビジネスはFCと共にある」と、FC支援を惜しまない考えだ。これまでの内部蓄積も大きく、きっかけをつかめば再浮上する可能性は高いが、マーケティング屋のカサノバ氏が、この非常時を乗り切っていけるのかどうか、残された時間は少ない。

中村芳平/外食ジャーナリスト

中村芳平/外食ジャーナリスト

●略歴:櫻田厚(さくらだ・あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。高校2年生の時に父が急逝し大学進学を断念、アルバイトして家計を助ける。都立羽田高校卒業、広告代理店勤務。72年に14歳年上の叔父(モスフードサービス創業者・櫻田慧)に誘われ「モスバーガー」の創業に参画。フランチャィズ(FC)オーナーなどを経て、77年に同社入社。直営店勤務を経て教育・店舗開発、営業などを経験。90年、初代海外事業部長に就任、台湾の合弁事業の創業副社長として足掛け5年半でモスバーガーを13店舗展開。1985年の株式上場と244店舗展開(16年9月末)、そして同社の海外展開の基礎をつくった。慧氏は97年にくも膜下出血で急逝、享年60。櫻田氏は98年社長に就任、14年会長兼社長に就任し、今年6月、社長を常務取締役執行役員の中村栄輔氏(58)に譲った。社長交代は18年ぶりのことだ。櫻田氏は中村氏に国内事業、新規事業を任せ、海外事業に全力を注ぐ構えだ。「モスバーガー」を世界のブランドにするという、夢の実現に向かって挑戦しようとしている。

マック崩壊を招いた、組織破壊と優秀な人材の放逐 FCから反発噴出で集団離反の恐れものページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!