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採用代行(RPO)・定型業務とコンサル業務の境界線…東京労働局が示した見解

2026.08.24 05:55 2026.08.23 22:46 経済
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=松田美里/社会保険労務士

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●この記事のポイント
採用代行(RPO)は職業安定法上「委託募集」(第36条)と「有料職業紹介事業」(第30条)のいずれかに該当しうる。2026年3月、東京労働局はスカウト文面作成など候補者選定に踏み込む業務に許可が必要との見解を示した。委託前に確認すべき業務範囲の線引きと、企業側のチェックポイントを解説する。

 人手不足を背景に、採用業務の一部または全部を外部の専門事業者に委託する「RPO(Recruitment Process Outsourcing、採用代行)」の活用が広がっている。厚生労働省の推計では、日本の総人口は2060年に9000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準に達する見通しだ。労働力の確保がこれまで以上に難しくなるなかで、採用業務を自社だけで回しきれない企業が増え、RPOはその現実的な解決策として存在感を増してきた。

 その一方で、あまり知られていないのが、RPOに委託する「業務の中身」によっては、行政の許可が必要になるという法律上の論点である。これは委託する企業側・委託を受けるRPO事業者側の双方に関わる話であり、「知らなかった」では済まされないリスクを内包している。本稿では、この論点がなぜ今注目されているのかを整理し、委託する側が押さえておくべき視点を紹介する。

●目次

RPOに関わる二つの法律上の枠組み

 RPOの適法性を考えるうえで軸になるのが職業安定法だ。同法には、性質の異なる二つの枠組みが存在する。

 一つは第36条の「委託募集」で、企業(募集主)が報酬を支払って、自社の従業員募集を第三者に委託する形態を指す。これを行う場合、原則として厚生労働大臣または都道府県労働局長の許可(無報酬の場合は届出)が必要になる。もう一つは第30条の「有料職業紹介事業」で、求職者と企業の間に立って雇用関係の成立を仲介(あっせん)する行為を指し、これを事業として行う事業者には厚生労働大臣の許可が必要となる。

 ポイントは、RPOという言葉自体が特定の法律上の類型を指すものではなく、実際に委託している業務の中身によって、どちらの枠組みに該当するか(あるいはどちらにも該当しないか)が変わるという点にある。求人原稿の掲載作業や、あらかじめ決められた日程調整といった定型的な事務作業は、原則としてどちらの許可も不要とされる。一方で、候補者を選び出してあっせんする行為が反復継続して事業として行われる場合、最高裁判所も過去の判例(平成6年4月22日判決)で、スカウト行為に極めて広く職業紹介性を認めている。

「定型業務」と「コンサル業務」の境界線

 問題は、この境界線が実務上、必ずしも明確ではないことだ。求人原稿の作成一つを取っても、あらかじめ企業が用意したフォーマットに沿って掲載するだけなら定型業務といえる一方、候補者の属性に合わせて訴求内容を書き分けたり、個別にスカウト文面を作成して送信したりする業務は、候補者の選定に踏み込む「コンサルティング要素」を帯びてくる。

 この点について、2026年3月に厚生労働省の東京労働局需給調整事業部が示した見解では、候補者に合わせた求人文面やスカウト文面の作成・送信、応募者のスクリーニングといった、候補者の選定に踏み込む業務には有料職業紹介事業の許可が必要になるとされている。あらかじめ決められた求人原稿の掲載や、指示された面接日程の調整といった事務的な定型業務は許可が不要である一方、業務範囲がどこまで広がると許可が必要になるのかは、個別の業務設計に大きく左右される。

 なぜ今、この論点への関心が高まっているのか。一つには、RPOサービスが「求人票の掲載代行」といった単純な作業支援から、スカウト運用や候補者対応、選考設計まで踏み込む「戦略伴走型」へと高度化してきたことがある。委託できる業務の幅が広がるほど、便利になる一方で、意図せず許可が必要な業務範囲に踏み込んでしまうリスクも高まる。RPO事業者・委託企業のどちらか一方でも許可要件を満たしていない場合、無許可での有料職業紹介は1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となりうる。

「RPO業界にとって、この論点は”逆風”ではなく、業界の健全な発展に必要な整理だと捉えるべきです。境界が明確になることで、まっとうに許可を取得し、コンプライアンス体制を整えている事業者が正当に評価されるようになります。委託する企業側も、価格や実績の多さだけでなく、委託先が適切な許可を持っているかを選定基準に加える意識が広がってきています」(人事労務コンサルタントで社会保険労務士の松田美里氏)

委託する側が確認すべきこと

 この論点は、RPO事業者だけの責任問題ではない。委託する企業の側にも、次のような確認が求められる。

 第一に、委託したい業務が「定型的な事務作業」なのか、「候補者の選定に関わるコンサルティング業務」なのかを、契約前に整理すること。第二に、委託先の事業者が、業務内容に応じた許可(有料職業紹介事業許可、または委託募集の許可)を保有しているかを、厚生労働省の許可・届出事業所検索などの公開情報で確認すること。第三に、契約書のなかで委託する業務範囲を具体的に明記し、実際の運用が契約の範囲を超えていないかを定期的に点検すること。料金の安さや実績の多さは、許可の有無を代替するものではない。

 これは、RPO業界に限った話ではない。採用に限らず、経理や法務、マーケティングなど、企業が専門性の高い業務を外部に委託する場面は増え続けている。「便利だから」「実績があるから」という理由だけで委託範囲を広げ、気づかないうちに規制の境界を越えてしまうリスクは、業種を問わず存在する普遍的な論点だ。RPOの事例は、外部委託全般におけるガバナンスのあり方を考える、一つの具体的な手がかりともいえるだろう。

●RPO委託前に確認したい5ポイント
(1)委託したい業務内容を、業務レベルまで具体的に洗い出しているか
(2)委託先が、業務内容に対応した許可(有料職業紹介事業許可・委託募集許可)を保有しているか
(3)契約書に、委託する業務範囲が具体的に明記されているか
(4)実際の運用が、契約で定めた業務範囲を超えていないか、定期的に確認する仕組みがあるか
(5)判断に迷う業務があった場合、労働局や社会保険労務士など専門家に確認する体制があるか

 RPO市場の拡大は、人口減少という構造的な課題に対する、企業の合理的な対応の一つだ。この記事で紹介した規制論点は、RPOという手段そのものを否定するものではなく、健全に活用するための「取扱説明書」のようなものだと捉えるのが適切だろう。委託する業務の中身を正しく理解し、信頼できる委託先を選ぶことができれば、RPOは今後も人手不足時代の採用を支える有力な選択肢であり続けるはずだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=松田美里/社会保険労務士)

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公開:2026.08.24 05:55