更年期というと、女性に特有の症状という意識が長年ありましたが、近年の研究で男性にもあるということがわかっています。男性更年期は、加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群とも呼ばれます。男性更年期の特徴としては、不眠やイライラなどの精神状態、性機能障害(ED)や精力低下などがあるとされています。
こうした男性更年期に対応するために、近年、男性向け総合クリニックと呼ばれる施設が生まれ、受診する人が増えています。この先駆けとなったひとつが、1999年に開設され、2014年にJR東京駅前に移転した「メンズヘルスクリニック東京(旧城西クリニック)」です。男性型脱毛症(AGA)に対応する頭髪医療のほか、男性更年期、男性不妊、前立腺がんサポートなどの専門外来をそろえ、加齢に伴う男性特有の症状を解消する適切な治療を行っています。
このクリニックグループの来院者数は月間約6000人に達し、都心のビジネスマンを中心に、さまざまな職業や経歴の男性が訪れています。総合的に男性機能を測定する「男性力ドック」などの医療サービスも提供しており、気軽に受診できる態勢を整えています。
そこで今回は、メンズヘルスクリニック東京の小林一広院長に、男性更年期について話を聞きました。
40代後半から更年期が訪れる
–男性更年期が意識されてきたのは、いつごろからですか?
小林一広氏(以下、小林) いわゆる更年期障害は、これまで女性特有のものだとされてきました。性ホルモンの動態が大きく変わることで、いろんな心身の障害が出るのが更年期障害ですから、男性も男性ホルモンが少なくなると、さまざまな症状が出てきます。女性の場合は、「閉経」という急激な変化があるので、症状が顕著に出る人が多いのですが、男性は徐々に表れる場合が多いのです。これが、うつ病の症状と似ているため、うつ病だと診断される場合もありました。男性ホルモンは微量なため測定するのが難しいのですが、ここ10年ぐらいで血液中の男性ホルモンの量を正確に測れるようになりました。それによって、男性もホルモンバランスが崩れ、更年期障害が表れるのではないかと考えられるようになり、ホルモン補充で症状を改善するという流れが認められ始めてます。
–更年期は、何歳ぐらいから症状が表れるのでしょうか?
小林 個人差が大きいのですが、ホルモンが低下するのが40代後半から50歳前後でしょうか。女性の閉経の時期と同じぐらいです。
–男性の若さは、生活改善や日常的な努力で維持できるものなのでしょうか?
小林 何もしないよりは、やったほうがいいです。筋肉も鍛えなければ衰えますから、トレーニングはしたほうがいいのと同様です。ホルモン量の低下は加齢に伴って進行しますが、これまで年齢のせいだからといってあきらめてきた身体の変化が、適切な治療で改善できるようになってきました。抗加齢医学で積極的に治療しようと前向きに考える人が増えています。
男性更年期など男性の加齢に伴う症状に対応する医療機関は、都内では順天堂大学、帝京大学をはじめとして専門の外来を設ける大学病院が次第に増えているほか、全国各地でも同様の外来施設を開設する病院も多く、徐々に世の中にも浸透しています。
–ありがとうございました。
出勤前の朝の時間を使ってビジネスパーソンなどに自己啓発の機会を提供している「丸の内朝大学」では、この春、「よっ!男前クラス ~男が憧れる男のなり方~」という、男性ホルモンの観点などから「男性力」を考える講座を開講しました。7時15分スタートという早朝の講座ながら、毎回多くの受講生で会場は埋まり、専門医の話に熱心に耳を傾けていました。いつまでも若々しさを維持したいという世の男性の強い意識の表れともいえ、今後もこうした動きは広がってゆくことが予想されます。
(文=中原宏美/経済ジャーナリスト)