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山本康博「なぜあの商品はヒットしたのか/しないのか」

今年上期ヒット商品番付への違和感…ウーバーイーツやタピオカが入っていないのはおかしい

文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役
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ウーバーイーツのバッグ(「Wikipedia」より/Atlasowa)

 

 2019年6月5日に「日経MJ」(日本経済新聞社)が発表した「2019年上期日経MJヒット商品番付」について、プロマーケッターの視点から分析してみたい。同紙は番付作成の基準について、次のように説明している。

「消費動向や世相を踏まえ、売れ行き、開発の着眼点、産業構造や生活心理に与えた影響などを総合的に判断して作成した。『東・西』は大相撲の番付表にならい東方が西方より格上であることを示す」

 東の横綱は「令和」、大関は「10連休」だが、「年号が令和になった結果、こんなサービスが流行った」「10連休でこんな商品が売れた」などならわかるが、「令和」や「10連休」がヒット商品・サービスなのかは疑問だ。もっとも、10連休中に始まった令和にちなみグッズ販売やイベントが行われるなど、改元フィーバーとなったのは事実だろう。

 西の横綱は「スマホペイ還元」だが、これはヒット番付にふさわしいと感じる。PayPayがユーザー獲得戦略として行った還元サービス「100億円あげちゃうキャンペーン」が話題となり、スマホ決済アプリ戦国時代に突入したからだ。関脇の「ダイナミックプライシング」は、需要と供給に応じて価格設定を変えるというサービスで、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン入場料やJリーグチケット、スーパーの価格などでも導入が進んでいる。

 昨今、人々の消費は「モノ」を買うことから体験=「コト」へ変化していると分析されることが多いが、それは今に始まったことではなく平成初期の時代からも続いていると感じる。ただバブル時代とは違い、今の人々は可処分所得が少なく、また将来不安から節約志向が強く、少額でもなんとかなる「コト」消費が拡大しているのではないだろうか。

 わざわざ高額なモノを所有しなくとも良いという概念は、シェアリングエコノミーといわれる物・サービス・場所などを多くの人と共有・交換して利用する仕組みに現れている。近年急速に普及しており、今後ますますモノを買って所有する必要がなくなっていくだろう。

 今回のヒット商品番付を俯瞰して見ると、小粒が多いという印象だ。本当にヒットしたといえるのは、規制緩和によって実現した液体ミルクくらいではないだろうか。これは欧米では普及しているが、これまで日本では規制で販売できなかったので、確実にヒット商品といえるだろう。

山本康博

山本康博

ビジネス・バリュー・クリエイションズ
代表取締役、損保ジャパン顧問。ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、日本たばこ産業、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本制作。1年以上継続した商品は計算すると3割以上、メーカー側でマーケティング実績35年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、2016年スタンフォード大学 David Bradford 名誉教授、ボストンカレッジ Allan Cohen 教授の推薦書として、世界に向けて英著、 “Stick Out”a ninja in Japanese brand marketingを全世界同時発売開始。『Stick Out~a ninja marketer』(BVC)、現在ブレイク中で話題のAmazon書籍総合1位も獲得したベストセラー『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版)の一人として8月1日執筆など。

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