雨上がり決死隊・宮迫博之やロンドンブーツ1号2号・田村亮、スリムクラブらを筆頭に、多くの芸人がかかわっていた「闇営業」。所属事務所を通さずにギャランティを直接受け取る仕事で、芸能界では昔から「直営業」あるいは「取っ払い」などと言われてきた。
事務所にマージンを抜かれずギャラがすべて自分の懐に入る直営業が蔓延しているのは、何も芸能界だけではない。風俗業界では「直引き」と呼ばれ、多くの店でご法度とされているが、少なくない数の風俗嬢が裏で手を染めているのが実態だ。
“覆面客”で実感した人気風俗嬢の素質
今から10年ほど前。3歳の男の子を育てる“シンママ風俗嬢”だった25歳の理恵子(仮名)は、朝一番で息子を保育園に預け、夕方6時までお客を取っていた。理恵子は見た目もスタイルも十人並みだが、性格の良さと濃厚なサービスでリピーターが続出。多くの常連客から指名を受け、10時間で3~5つの“枠”がほぼ埋まり、1日5万円ほどを稼いでいた。
当時、私は理恵子が勤める店の経営者から、しばしば“覆面客”を頼まれていた。経営者から受け取ったお金で、一般の客として店を利用する。そして、見た目がいいにもかかわらず人気が出ない女の子の欠点を店に報告して意識改善をさせたり、人気がなくお茶を引きそう(=客がつかない)な女の子の客になることで他店に人材が流出するのを防いだりするのだ。時には、初めての女の子にさまざまなテクニックを教えることもあった。
理恵子の場合、業界自体が初めてだったため、初日は私が覆面客となった。紳士的な客として振る舞い、彼女に「優良店だから大丈夫」と安心感を持たせるのが狙いだ。
ラブホテルの一室で待機していると「ピンポーン」とチャイムが鳴る。ドアを開けると、彼女は明るい笑顔を見せた。マニュアルに沿って料金の受け渡しを終えると、彼女は私の服を脱がせ、それを丁寧にたたんで籠の中に入れてくれた。品の良さを感じさせる佇まいだった。そして、恥ずかしそうに全裸になると、先にシャワールームに入り、冷たい床をシャワーで温めてくれた。客である私が冷たがらないように、との配慮である。
いざプレイになると、濃厚な奉仕をしてくれた。彼女自身の感じ方もすごく、ベッドのシーツは“世界地図”に……。私が経営者に「素質十分」と報告した通り、理恵子は瞬く間に人気者となった。
直引きで月50万円以上稼ぎ始めた理恵子
彼女は“風俗頭”が良かった。デリヘル嬢の半数以上は簡単に“本番”をさせる。お金目的はもちろん、口や手を使うのは面倒くさいため早く終わらせたい、などの理由からだ。客を興奮させるのが上手な理恵子は毎日のように本番をせがまれたが、「ダーメ」と笑顔でさらりとかわしていたという。
すると、多くの客が店外での直接交渉=直引きを望んだ。店を通さなければ時間を気にすることもなく、本番もできるだろう、というわけだ。お金に余裕のある常連客がよく持ちかける手口である。
半年ほどして、理恵子は「金払いが良く、嫌な感じを受けない」40代社長からの「直引き要望」に応じた。しかし、直引きはすぐに店にバレる。常連がいつもの時間に連絡をしてこなくなり、その客に指名されていた女の子も欠勤するためだ。