ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

東京・新宿区と渋谷区で“子どもが増えている”…「東京=低出生率」の終焉か

 誤解がないようにつけ加えておくと、副都心区に住む独身の若者たちが結婚しないのではない。やがて彼らも結婚し、子どもを生む。この過程で、もっと広い住宅を求めて郊外に転出していく。後に残った空いた住宅に、次なる独身者が入居する。出生率が低いのは、この繰り返しの結果にすぎない。

 自治体とすれば、将来のまちの担い手となる子どもを生み育ててくれるファミリー層の定着が望ましい。しかし、副都心区にファミリー層が少ないのは、前述した社会メカニズムの結果だ。磨き抜かれた戦略なしに、この流れを逆転させ、ファミリー層を増やすことはできない。

イメージ一新!副都心戦略の成果

 独身男性が多く、華やかさに欠ける豊島区と中野区は、まちのイメージを大きく変えるショールームづくりに戦略の重点を置いた。取り組みが先行した中野区では、12年に中野駅至近の場所に「中野四季の都市(まち)」がオープン。「オタクのまち」が一新される。

 豊島区では、池袋全体を劇場空間化する一連の取り組みが、ファミリー層居住の受け皿となる住機能の更新と併せて進行中だ。華やかさ不足は中野区以上という実態を考慮してか、17年以降2年連続で待機児童ゼロを達成した保育所の充実をはじめ、親子でくつろげる公園の整備、さらには公衆トイレをきれいにする「パブリックトイレプロジェクト」まで、取り組みの範囲は幅広くかつきめ細かい。

 もともとまちのイメージ評価が高い渋谷区では、同時多発的に進む渋谷再開発を通じた「渋谷ブランド」の一層の向上に的が絞り込まれている。渋谷ほどではないにせよ、やはりまちにブランド力がある新宿区は、ミライナタワーのオープン(16年3月)に代表される、渋谷型のブランド向上戦略を先行させるとともに、第2段階として四谷や飯田橋駅前で居住機能併設型の再開発を進めつつある。

 図表3では、それぞれのデータの出所が異なるため単純な数値比較はできないものの、副都心各区で幼児人口が23区平均を上回るペースで増加している傾向を読み取ることができる。副都心戦略の成果が実を結び始めた証だ。

幼児人口の増加が顕著な新宿区

 図表3をもう少し詳しく見ると、10~15年は12年に「四季の都市」がオープンした中野区で特に幼児人口が大きく増加したが、その後23区の平均並みにペースダウンしている。一発打ち上げ花火の限界が現れた感、なきにしもあらずだ。

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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