コデインリン酸塩がついに規制される
市販薬の場合、「伝統的な薬」を使うことが多いです。それこそ今では「スイッチOTC薬」という、医療用成分のうち安全性が高い成分を新しく市販でも扱えるようになってきています。市販でも使っていい薬のリストのなかに、こうして新しい薬が追加されていくのです。しかし、従来の薬は実績があるため、よほどのことがない限り使われ続けます。その一つが、麻薬性咳止め成分である「コデインリン酸塩」なのです。市販で安易に麻薬性成分が買えるということで、目をつけた悪い人たちが出てきました。その人たちは「常備薬を買いに来た」と装うので、なかなか見抜けません。
2010年6月に厚生労働省医薬品食品局通知がありました。コデインなど麻薬性咳止め薬について、患者への発売量を制限し、十分な服薬指導を行うことなどを求めるものです。そして使用上の注意の「してはいけないこと」に「過剰な服用・長期連用しないこと」を追記するよう指示されたのです。
これ以降、薬局では原則として一人1個しか購入できなくなりました。購入希望者が大量使用者や長期連用者と思われる場合には、薬局側は販売を控えなくてはなりません。もちろん今までもそういった人については断っていたものの、通知というかたちで明文化されたので、毅然とした対応が取れるようになりました。また未成年者が買いにきた時は、保護者による購入希望の事実確認を行い、身分証明書の確認もしなくてはなりません。
12歳未満には禁忌に
時は流れ、2017年7月に厚生労働省より12歳未満の小児に対して禁忌とする通知がされました。禁忌というのは「絶対に使ってはいけない」という意味です。これ以前にアメリカで同様のルールが定められ、日本でも薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で、本剤の安全対策について検討されました。
その結果、コデインなどによる死亡例の国内報告はなく、日本での呼吸抑制のリスクは欧米と比較して遺伝学的に低いと推定されることから、国内でただちに使用を制限する必要性は考えにくいとされました。しかし、コデインなどによる小児の呼吸抑制発生リスクを可能な限り低減するために準備期間を設け、2019年現在は禁忌となりました。
咳止め成分は多くの風邪薬に含まれています。この準備期間に添付文書が見直されたり、コデインなどを含まない薬が販売されました。コデインなど麻薬性成分を含まない薬としては、「ベンザエースA」「ルルアタックTR」「新コンタック風邪総合」「パイロンPL顆粒」などが挙げられます。
症状によってはコデインなどを使わなくてはならない場合もあり、薬剤師や登録販売者に相談した上での購入をお勧めします。
(文=小谷寿美子/薬剤師)