また、こうした道路では歩道と車道の明確な分離もされていない。教習所ではキープレフトと教えておいて、現実の道路では歩行者に注意せよとドライバーに全責任を転嫁している。道路を整備する時に歩道と車道を完全に分離し対面通行もなくすような努力義務を課していかなければ、いつまでたっても危険な状況はなくならない。
信号制御の問題点
多くの交差点においては、信号機が交通の流れを制御している。この制御の仕方にも問題を感じている。進行方向の信号機が青の場合、大抵の交差点では同進行の歩行者信号も青になっている。すると右左折する車両と歩行者の進路がクロスする。これを一本道に置き換えて考えてみると、車の進行方向も横断者の信号も共に青と同じ状態といえる。「歩行者がいたら優先させなさい」と運転者に注意義務を課すことで事無きを得ようとしているわけだ。
だが車側に死角があって歩行者を認識できなければ優先のしようがない。そして実際に歩行者が死角に隠れてしまうような構造の交差点が全国に多くある。すべての交差点においてスクランブル式を採用することが最低限の安全策として実行できないものかと思う。
また、大きな国道などにも問題を感じる場面がある。筆者がよく利用した東京都内の環状八号線は片側3車線の道幅の広い都道だ。だが横断者用の信号機も多く、1kmほどの間に5カ所くらい設置されている区間もある。そこを制限速度である60km/hで走行していると、すべての信号が赤になり毎回停止する。だが、ここを80km/hで走行するとすべてが青信号になりスムーズに通過できてしまうのだ。筆者が実際に試したわけではないが、机上の計算で確認できるし、日常的に走行しているドライバーは経験的にそれを知っていて、夜間など空いてる時間帯には常態的に速度違反車が多くなっている。
車は停止と再発進を繰り返すのが最も効率が悪く、燃費も悪化し環境負荷が大きい。そこで所轄の警察署に問い合わせると「交通安全のために意図的に停止させている」という。違反車が多い現実に対しては「適切かつ効果的に取り締まりを実施している」との返事だった。
車を止めれば走行車両との速度差が大きくなり、車列の後方では急ブレーキが必要になり危険。東名高速道路や首都高速の登坂区間では、渋滞回避のため車速を落とさないよう促す政策に切り替わったが、信号制御は旧態依然のままだ。深夜など歩行者がまったくいない時間帯でも車は停止させられる。地方に行くと夜間は黄色点滅に切り替わり交通の流れをよくする政策が取られているが、まだまだ全国的に広がってはいないと感じている。