正直、おいしかったのは一口目だけで、その後はまさに「栄養食」と思わなければ食べ進める気が起きなかった。意外に量も少なく、空腹が満たされることもないので、満足度がさらに低くなる。
空腹を抱えつつ、昼に食べたのは「油そば」味。もちろん麺は同じでボソボソするが、油そばの味自体は完成度が高かった。それだけに、この味を普通の麺で食べたらどんなにおいしいだろう、とも感じた。
さて、初日の締めは「トムヤムまぜそば」味。ちなみに、筆者はトムヤムクンとパクチーが苦手である。調理を済ませ、意を決して口に入れたが、かなりパクチーの風味が強い。加えて、あの独特な酸味と麺の味が口内を襲う。普通なら残したくなるレベルだが、検証のためだと思い、食べきった。もちろん腹は膨れず、満足感を感じられぬまま初日は終了した。
常に空腹、集中力が続かない…
このように、3日間すべての食事を「All-in NOODLE」で生活してみた。理論上、栄養素は補えているはずだが、常に空腹感を感じ、そのせいもあってか集中力が続かなかった。
正確に体重を測ったわけではないが、職場の同僚からは「痩せた?」と声をかけられることも多かった。とはいえ、今回はダイエット目的で食べているわけではないので、これは副次的な作用にすぎない。栄養に不足はなかったはずだが、その実感を得ることもなかった。また、1食600円台とカップ麺にしてはかなり高額なので、毎日食べるのは経済的にも良いとはいえないだろう。
話題性の高い完全栄養食だが、そのわりに“静かな”ブームとなっているのは、やはり現段階では主食となるまでのレベルに達していないからではないだろうか。ただ、最近は「食事をすることが億劫」という人も増えているようなので、こうした完全栄養食をうまく利用して、ほかのことに時間を割くという生き方もアリなのかもしれない。
(文=沼澤典史/清談社)