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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

抗がん効果が話題のベータ-カロテン「のみ」過剰摂取は危険!がんリスク増大など体に害の恐れ

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事

 しかし、その後の調査で、その人たちのがん発生率を低くしていたのは、実はベータ-カロテンだけではなく、野菜や果物に含まれる数多くのカロテノイドを中心とした植物栄養素群だということがわかったのです。

 植物栄養素は、そのうちのどれかひとつが重要なのではなく、チームとして数多くの植物栄養素が体内に存在していることが重要だったのです。ベータ-カロテンは適量摂取すれば確かに健康効果をもたらす物質ではありますが、数ある植物栄養素全体の中のひとつの指標でしかなく、それだけを多量に摂取しても効果がないどころか、害にさえなるということがわかりました。

 ベータ-カロテンを単体で、つまりサプリメントなどで過剰摂取すると、がんのリスクを増大させる可能性があるといわれています。ベータ-カロテンを自然な食品から摂取する場合には、ほかの重要なカロテノイドを一緒に摂取することになりますが、サプリメントでは違います。健康効果を期待するのであれば、ほかのカロテノイドを一緒に摂らなければなりません。ちなみに全食品中、カロテノイドを最も高濃度に含んでいる食品は、干しあんずだそうです。

特定の栄養素を摂取しても無意味

 筆者が提唱している食事スタイル「オプティマルフードピラミッド」に沿った食事を続けていれば、ベータ-カロテン不足に陥ることはほとんど考えられません。食事全体の40%を新鮮な野菜で占めていれば、ベータ-カロテンの必要量を十分に満たすことになるからです。

 このベータ-カロテンの例のように、特定の栄養素に効果効能があるといっても、さらに詳細な分析が行われたときには覆る説もあります。だからといって、「効果効能を謳う一切の情報を信用しないように」と言いたいのではありません。ただ、特定の栄養素を摂ることと自然の食品を摂取することは、まったく違う行為だと理解すべきでしょう。ベータ-カロテンを含んでいる自然の食品には、必ずほかのカロテノイドを含むさまざまな植物栄養素もあります。健康効果をもたらすのは、それらの「総合力」なのだということを忘れないでいただきたいのです。

 これは、自然の食品よりも強力な効果効能を期待できるものはない、ということでもあります。

 加工食品には、着色と栄養強化の目的で工業製品的につくられたベータ-カロテンが使われています。たとえ1品目に使われている量がわずかであったとしても、複数の加工食品を食べれば相当の量を摂取することになってしまいます。過剰摂取に害があることがわかっても、食品メーカーが食品添加物としてのベータ-カロテンの使用を控えることはありません。むしろ、使用を推奨する傾向があるようにさえ見受けられます。私たちは、製造・販売側の一方的な理屈ではなく、自分が食べる物に含まれる物質を、体の中に入れる合理的な意味合いがあるのかどうかを考えなければなりません。

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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