最近は、『座ったままの仕事』と『歩き回る仕事』の健康上の違いを追跡する研究が流行しています。こちらは、まだデータがバラバラで、『将来の死亡率や、がんの発生率には差がない』と結論づける論文のほうが多いようです。『両者に関係あり』とする論文もありますが、『農畜産業に限り』『女性に限り』などの条件付きです。
さまざまなビッグデータの統計分析を行ってきた私の経験からいえば、このような条件が必要となるのは、明確な因果関係が存在しないからです。
では、『テレビを見ている時間』と『仕事で座っている時間』の違いはなんでしょうか? それは、オンタイムかオフタイムかの違いです。たとえ仕事で座っている時間が長くても、オフタイムに運動している人は、将来の死亡率が低いのです。一方、テレビを長く見続けるという生活習慣は、オフタイムの運動量が少ないことを裏付けているのではないでしょうか。
座る時間があまりに長いと肥満になりやすく、エコノミークラス症候群の原因となる深部静脈血栓症などの病気にかかりやすいことは確かです。デスクワークの人は、時々席を立って歩くようにしたほうが良いでしょう。
大切なことは、家にいる時もテレビばかり見ていないで、運動に励むことです。健康維持のためには、1日30分、週5回の運動が必要です」
“立ちデスク”で社員の「座りすぎ」を防止する企業も
座りすぎと重大疾患について、明確な因果関係は確認されていないものの、長時間同じ姿勢を続けるというのは、避けたほうがいいようだ。そんな背景もあり、最近は立ったままデスクワークを可能にする「昇降式デスク」を導入する企業も増えているという。
前述の『クローズアップ現代』では、今年8月に1万3000人の社員のデスクを、最高125センチまで上げられるタイプに一新したIT企業の例が紹介されていた。
「以前勤めていた会社のデスクが昇降式だった」という30代男性は、その感想を以下のように語る。
「最初は新鮮で、確かに仕事もはかどりました。座っていると、足を組んだり、だらしない姿勢になりがちですが、立っているとそれができないため、自然と姿勢も良くなった気がします。疲れてダレてしまいそうな時は、無理に仕事を続けずに、休憩スペースに行ったり、机を下げて座ることで、メリハリもつきました。しかし、一度机を下げてしまうと、やはり楽なので、なかなか元に戻さない人もいましたね(笑)」
職場の環境や仕事の状況はそれぞれ違うため、「座りっぱなしにならざるを得ない」という人もいるだろう。しかし、大事なのは、岡田氏の言うようにオフタイムの使い方であり、運動など日々の生活習慣のようだ。
(文=編集部)