世界的に稀な素晴らしい日本の国民皆保険、崩壊の現実味高まる…患者の自費負担増も
今回は保険制度についての激論です。診療報酬が2年ぶりに改定されました。診療報酬とは、保険診療に際して医療行為に支払われる金額を定めたものです。日本の国民皆保険システムにとってのもっとも大切な部分で、通常2年毎に改訂されていきます。
今回の改定では、かかりつけ医とかかりつけ薬剤師の導入が進みやすいように診療報酬の変更が行われています。また、大病院を紹介状なしで受診すると初診で5000円以上、再診で2500円以上の追加負担を患者さんに強いるシステムになります。日本の医療は素晴らしく、2014年の平均寿命は女性が86.83歳で3年連続の世界一、男性は80.50歳で4位から3位にランクアップしました。この平均寿命の世界的レベルを維持している要因は、供給される医療の質が素晴らしいという点にあります。
しかし、この医療を支える費用は約40兆円に上り、そろそろ限界を迎えています。そして高齢化社会が叫ばれるなか、今までと同じように税金や皆さんから集めた保険料で医療を支えていくことには限界が見えています。そこで、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師を導入し、重複している検査や投薬などを極力減らそうという作戦なのです。さらに医療の機能を分担するために、先端医療を行う大病院に直接受診することがないように、紹介状がない受診者には課金しようという作戦です。
税金による補填をめぐる議論
そんな診療報酬に関して、今回はバトルが繰り広げられています。まず、“非常識君”は「今でも国の借金は1000兆円近くあるのだから、もしも医療費が足りなければどんどん社会保障費として借金を増やして、税金で補填すればよい」という考えです。
一方、“常識君”は「1970年の医療費は2.1兆円だったが、80年には10.7兆円、90年には18.4兆円、2000年には26.0兆円、そして14年には37.0兆円と増加している。このまま増加すれば、相当な額が必要になり、それを税金で補填すれば、国の借金はますます増加することは間違いない。国の信用にもかかわる」といいます。
そして“極論君”は、「医療システム自体が出来高払いになっていることが問題だ」と主張します。現状では保険診療の医療費は最大で3割負担です。それ以下、またはまったく負担がない人もいます。そして3割負担でも素晴らしい制度ですが、暦月での負担額に上限があり、通常の収入では約8万円以上は還付されます。つまり1000万円の治療を受けても、3割負担の300万円を払うのではなく、通常は月々約8万円が上限なのです。