世界的に稀な素晴らしい日本の国民皆保険、崩壊の現実味高まる…患者の自費負担増も
総量規制は必要か?
極論君はレストランにたとえて現状を以下のように説明します。
「どんな料理を食べようが3割負担が上限で、そして毎月8万円の負担も上限となれば、料理を注文するほうは少しでも美味しい料理を食べたくなる。少々満腹でも、美味しそうなものがあれば注文する。そしてオーダーを取るほうもちょっとでも美味しい料理があれば当然にそれを勧めるし、ましてや上限額を超えた場合は懐の心配が不要になるので、どんな高級シャンパンを勧めてもお客さんに嫌な顔はされない」
そして極論君は「やっぱり総量規制をやるべきだ」と続けます。それは患者サイドに保険診療でカバーできる医療費の上限を設定し、それ以上は自費でお願いしますという作戦と、または医療サイドに上限を設定し、この医療機関に公的保険からサポートできる金額はこれだけですよと決める作戦のどちらか、または両方です。
極論君は言います。
「もしレストランで顧客が7割以上を援助してもらえ、その援助額に上限が決まっていて、それ以上はすべて全額を自分で払うとなれば、顧客の注文の仕方も変わってくる。少しは今月はどのぐらい払ったのだろうという気遣いをしながら注文する。またレストラン側にも税金から補填する総額を決めれば、顧客の必要性をもっと吟味しながらオーダーを取るだろう」
常識君が援軍を出します。
「レストランに年間の補助額の上限を決めるという作戦は、イギリスのNHSという国民皆保険システムに似ています。イギリスはかかりつけ医を元気な時から決めることが必須で、そのかかりつけ医の紹介状がないと専門病院で受診できません。そんなシステムでもイギリスの平均寿命は、男性79歳、女性83歳で日本とほぼ同じです」
イギリスでは国民皆保険は維持されていますが、日本では当たり前のフリーアクセス、つまり個人の希望でどこにでもいけるというシステムが否定されています。
常識君は、「今の日本の国民皆保険、フリーアクセスの制度がこれからも続くように、不必要な医療や薬を削減する必要がある。そんなことが見え隠れする今回の診療報酬の改定だ」として、議論を結びました。
(文=新見正則/医学博士、医師)