新型コロナウイルスの影響により、飲食店が軒並み大打撃を受けているのは周知の通りだ。東京の小池百合子知事が「バーやナイトクラブなど接待を伴う飲食店は当面自粛して」と訴えたことにより、特に夜の街は深刻な売り上げ低迷に直面している。
そんな状況で気になるのが、銀座コリドー通り(コリドー街)の現状だ。数多くの飲食店が建ち並ぶコリドー街は、特に週末は仕事終わりのサラリーマンやOLであふれ、「出会いの聖地」としても知られている。
昨年11月には、JR高架下に「URACORI(銀座裏コリドー)」がオープンした。男女で気軽に相席状態がつくれると人気のおでん屋台「東京おでんラブストーリー」や、「人と人を繋ぐ」がテーマの「MURA BAR」、芸能人の来店情報も飛び交うクラブ「GHQ」など、大人の遊び場がずらりと並ぶアーケード街だ。
コリドー街が道路に面して開放的な印象なら、裏コリは隠れ家的な空間を醸し出している。高架下の路地に並ぶ店はライトアップされ、落ち着いた飲み屋街としてコリドー街と差別化を図っているのがわかる。
この地には、東京オリンピックが開催された1964年につくられた「インターナショナルアーケード」という商店街があった。高架下の薄暗く狭い通路に居酒屋が並び、時代に取り残されたような異質な空間として存在していたのだ。同所は外国人観光客をターゲットにしており、開業当時は円安によって外国人が多く集い活気にあふれていたが、その後売り上げは激減。廃墟同然となっていた。
そこで、再び東京五輪が開かれるということでリニューアルされ、誕生したのが裏コリだ。しかし、さしたる話題にもならず、オープンから半年もたたずに新型コロナの逆風にさらされている。今、コリドー街と裏コリはどうなっているのか。実際に訪れてみた。
金曜夜に閑散とするコリドー街
これまでならもっとも活気にあふれているであろう、金曜日の夜。3月下旬、飲み歩いているようなサラリーマンの姿は通りに1組も見当たらない。店の前で呼び込みをするスタッフの声がむなしく響くほど、コリドー街は静まり返っていた。通りに面した居酒屋や飲食店も、客同士が間隔を空けてまばらに座っており、とても「出会いの聖地」とは思えないほど閑散としていた。
コリドー街がこの調子では、裏コリはさらに期待できないだろう、という予感は的中。高架下へ向かう道にも人影はほとんどなく、立ち並ぶ店舗には暇そうな店員の姿があるのみ。それなりの席数がある居酒屋にも、客はたった3組しか入っていない。
そもそも、シャッターが閉まったままの店も多く、もはや営業自体をあきらめたかのような悲しい雰囲気が全体に漂っていた。
「自粛ムードなのでさすがに飲みに行くのはやめようかと思ったのですが、近くを通ったらあまりにも閑散としていたから、これなら大丈夫かなと(笑)。よく仕事終わりに飲みに来るのですが、ここまで人がいないコリドーは初めてかもしれません」
そう話すのは、裏コリの居酒屋に入店しようとしていた2人組の男性サラリーマン(30代)だ。新橋勤務だという2人は毎週のようにコリドー街に繰り出すのが定番だったが、最近はさすがに飲んで帰る雰囲気にもなれないという。
「行きつけのバーがあるので、そこだけは応援する気持ちで通い続けていきたい。ただ、周囲の目もあるし、もちろんコロナの感染も怖いので、そろそろ厳しいかもしれないですね……」
今回、裏コリは初来訪だが「出会いに関してはしばらくはあきらめました」と嘆く。
一方、コリドー街のバルの隅で飲んでいた30代の女性は「出会いの聖地」ゆえにコロナの影響をもろに受けているのではないか、と話してくれた。
「コリドーも裏コリドーも、基本的に席と席の間隔が近い店ばかり。人口密度が高くて知らない人ともワイワイ楽しめるのがコリドーのいいところですが、それが今は逆効果なのかも……まぁ、空いているから、これはこれで快適ですけどね」
「密閉・密集・密接」の「3密」の回避が要請されている今、それらの条件を満たしているコリドー街は敬遠されているようだ。また、万が一感染して感染経路をたどられた場合、「出会いの聖地」を訪れていたことがばれたくないという人も少なからずいるだろう。
約11店舗で始動した裏コリは約100店舗に拡大する予定だと報じられていたが、今後はどうなるのだろうか。
(文=藤野ゆり/清談社)