基本は温かいものを選ぶ
炭水化物や脂肪は、脂肪として貯えられます。そして脂肪はいつでも燃やせるエネルギー源なのです。ところが自分が燃焼できる以上に冷たい状態が続くと体は冷えてきます。また、多くの人の場合、あまりにも冷えている状態が続くと体は体温の設定温度を低くするようになります。脂肪を燃焼させるという無駄を省くためです。
つまり、自分が健康と感じているのなら、何を食べても大丈夫です。問題は、冷え症だとか、お腹が冷えて下痢をしやすい、冷たいものを食べると食欲がなくなるといった症状を実は抱えているのに、冷たいものが好きな人がいるのです。そんな人は「自分の体の危険信号を無視しているお馬鹿さんですよ」ということになります。
そうであれば、極論君が言うように、すべて温かいものを頂けばいいのです。理由は、冷たいものばかりを食べるよりも、温かいものばかりを食べたほうがはるかに安全だろうということです。体温が上昇しすぎれば、汗を出して、そして気化熱で体を冷やします。例外は熱中症の危険があるときだけです。当たり前と言えば当たり前ですね。つまり、基本は極論君のように温かいものを選び、でも冷たいものが欲しければ適量を楽しむというスタンスです。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざもあります。喉から先、つまり食道から胃、そして小腸、大腸は熱さや冷たさ、そして痛みを感じることがありません。だからこそ、熱さを忘れるのです。つまり冷たさも感じません。ビールなどをガンガンと飲む人は、同じ量で同じ冷たさのビールをビニール袋にでも入れて、背中やお腹にあてるとどれだけ不健康なことをしているかを体感できますよ。相当に暑い日でも、それだけの量のビールを体の周囲にまとうと不快なほど冷たく感じます。
常識君曰く、「自分の体を知って、そして不健康にならない範囲であれば、食べたいものを、美味しい頂き方で食べるのが最高」。そうですね。冷たいものばかりを食べるという非常識君よりは、温かいものばかりを頂くという極論君が優れていて、でも食べたいものは美味しい調理方法で食べるという常識君の立ち位置が、生きていて楽しいですよね。
(文=新見正則/医学博士、医師)