秋津壽男「正しい医療or間違った医療はこっち!」
がんリスクの遺伝子診断、これでもあなたは受ける?低信頼の検査で人生不幸になる危険
文=秋津壽男/総合内科専門医、秋津医院院長
たとえば食道がんの患者100人を調べると「XXX」という遺伝子を持つ人が正常人より多かったとしましょう。このXXXが食道がんのマーカーとして有効かどうかは、健康人の中のXXXを持つ人と持たない人数千人を5~10年追いかけて、食道がんの発症率に差があるかどうか統計学的な処理をして初めて判定できることなのです。
現時点での遺伝子診断は玉石混淆で、がんのリスク評価にしても「やや危険」や「30から60%」のようなあいまいな表現が多いようです。
もし検査の結果、「将来がんになる確率が非常に高い」という結果が出たら、アンジェリーナ・ジョリーさんのように手術しますか。それともビクビクしながら不安な日々を送っていきますか。いまだ信頼性の確立されていない検査で人生を左右されるのはいいことでしょうか。よくない結果が出た時にどうするつもりか、はっきりした方針を持っていない方は、現時点での検査をおすすめしません。
検査技術とデータの蓄積はこれからも必ず進歩していくはずです。私はもう数年待ってから、検査を受けようと思っています。
(文=秋津壽男/総合内科専門医、秋津医院院長)