堀江貴文氏は知事選出馬すべきだ…提言37項目、大麻解禁以外は新秩序を先取る画期的内容
実業家の堀江貴文氏が東京都知事選の立候補に意欲を示していると報じられた。堀江氏の出馬の可能性について周辺は「99%」と話しており、「正式な出馬表明は告示直前」の見通しだという。朗報である。ぜひ出馬すべきだと思う。
なぜかといえば、自民党は独自候補の擁立を断念しており、野党も有力な候補者を擁立できない現状では、小池百合子都知事の有力な対立候補がいないからである。その結果、投票率が下がり、小池氏が圧勝する可能性が高い。そうなれば、小池氏が“独裁化”するのではないかと危惧せずにはいられない。
もともと私は小池氏の一連の言動から、自己顕示欲が強いという印象を抱いており、常に注目を浴びていたい「スポットライト症候群」と勝手に診断していた。この印象は、今回のコロナ禍で「ステイホーム」を強調して何度も会見を開いたうえ、小池氏本人が出演したCM動画が血税約9億円をかけて作られ、テレビやネットで頻繁に流れるようになってから、確信に変わった。会見の際の肌の色艶の良さを見て、やはり大衆の視線と世間の注目が小池氏にとっては何よりも上等のクリームになるのだと痛感した。
要するに小池氏は「出たがり」なのであり、こういう性分はなかなか変わらない。もちろん、政策には評価すべき点もあるが、小池氏の自己顕示欲によって東京都の職員や都議会、さらには都民が振り回されることは、築地市場の豊洲への移転をめぐる騒動を振り返っても明らかだ。
堀江氏の都知事選出馬報道について感想を尋ねられた小池氏は、「とくにございませんけれど、まあ賑やかなこと、という感じ」と笑顔で答えたようで、余裕が感じられる。おそらく「泡沫候補が何人立とうが、自民党が独自候補を立てられないのだから、私の圧勝よ」と思っているのだろう。
これは非常に危うい。有力な対立候補がいない状況で、批判票の受け皿がなければ、小池氏が圧勝し、「これまでの私のやり方でいい」と思い込んで突き進みかねない。歯止めがきかなくなる恐れもある。
たとえ落選しても、堀江氏が失うものはない
もっとも、堀江氏は決して泡沫候補ではない。ツイッターには約350万人のフォロワーがいるし、YouTubeのチャンネル登録者数も100万人を超えている。著書も売れ続けており、大きな影響力を持つ。
もちろん、新型コロナウイルス対策のための過度の自粛を批判し、早期の自粛解除と積極的な経済活動の再開を主張している堀江氏には、“アンチ”も多く、ツイッターで発信するたびに炎上している。ただ、裏返せば、それだけ注目度が高いということでもある。
また、著書が売れ続けているのは、堀江氏のようになりたくてもなれない人が多いからであり、憧憬の念を抱く一定の支持層がいるはずだ。さらに、堀江氏と親しい「NHKから国民を守る党」(N国党)の立花孝志党首は、都知事選に立候補する意向を示していたが、「堀江さんが出るなら取りやめる」と話しているという。N国党の支持者には、現状に不満を抱いており、既得権益を持つ層をぶっ壊したいと願っている人々が多いように見えるので、そういう支持者を取り込めれば、かなりの票を獲得できるのではないか。
しかも、新型コロナウイルスの第二波を警戒して、緊急事態宣言の解除後も人と人との接触をなるべく減らさなければならないという事情も追い風になるように思われる。堀江氏は、通常の街頭演説や集会、支援者回りなどは行わず、インターネットを駆使する方針らしいが、こういう選挙活動が理解を得やすい状況にある。
だから、堀江氏が都知事選に出馬すれば、かなりいい勝負になるのではないかと期待している。少なくとも、出馬する際に納めなければならない300万円の供託金を、有効投票総数の10分の1を獲得できずに没収されるようなことはないだろう。
万一供託金を没収される事態になっても、NHKで政見放送を流してもらえるうえ、民放テレビや新聞などのメディアでも大々的に取り上げてもらえるので、広告宣伝費としては安いものだと思う。だから、たとえ落選しても、堀江氏が失うものはない。むしろ、大いにメリットがあるといえる。
新しいことをしようとする人をけなすのは嫉妬心から
堀江氏は、都知事選の告示直前に『東京改造計画』(幻冬舎)を緊急出版するようだが、それに対しては批判の声もある。第一、東京都への緊急提言37項には衝撃的な項目ばかり並んでいる。
精神科医として看過できないのは、「大麻解禁」だ。大麻は他の薬物への「ゲートウエイドラッグ(門戸開放薬)」になりうるので、その使用拡大を警戒しなければならないと主張し続けてきた身としては、決して容認できない。
ただ、それ以外の項目に目を向けると「オンライン授業促進」「現金使用禁止令」など、今後進めるべきだと思われる政策も並んでいる。良くも悪くも、堀江氏は時代を先取りする方なので、現在のわれわれをギョッとさせるのかもしれない。
堀江氏のように新しいやり方や秩序を主張したり導入したりする“先駆者”は、批判されやすい。ときにはボコボコに叩かれる。これは、ルネサンス期のイタリアの政治思想家、マキアヴェッリが見抜いているように「人は、心中に巣くう嫉妬心によって、ほめるよりもけなすほうを好む」からだ。
それを承知のうえで、都知事選にはぜひ立候補していただきたい。もし取りやめたら、著書の宣伝のために出馬情報を流したのではないかと勘繰られかねませんよ。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
塩野七生『マキアヴェッリ語録』新潮文庫 1992年