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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

劇的にがん患者の生存率を高める夢の新薬で、一部の人に重篤な糖尿病等の副作用発生!

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士
劇的にがん患者の生存率を高める夢の新薬で、一部の人に重篤な糖尿病等の副作用発生!の画像1「Thinkstock」より

 日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで命を落とすといわれています。日本人の死因トップであるがんの治療は、主に3大治療といわれる外科的手術、放射線治療、そして化学療法(抗がん剤治療)によって行われています。新たに加わった「免疫療法」「遺伝子治療」などは、保険適用されないので金銭的負担がネックとなっていました。

 しかし、今、このがん治療が大きく変わろうとしています。日本の医療体系を覆してしまうかもしれない薬の名前は「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)です。

 がん細胞によって、活動を制御されていた免疫細胞のブレーキを解除し、自分の免疫力を使ってがん細胞を攻撃する新たな免疫治療薬「チェックポイント阻害薬」としてオプジーボが承認されたのです。

 世界に先駆けてこのチェックポイント阻害剤を実用化したのは日本の中堅製薬会社、小野薬品工業です。今回は、「オプジーボの効果」について考えてみましょう。

劇的な効果を示した治験

 オプジーボは2014年7月に皮膚がん「悪性黒色腫(メラノーマ)」の新薬として、世界に先駆けて日本で承認されました。15年12月には肺がんについても追加承認されたのです。

 オプジーボはがん細胞を直接攻撃するのでなく、がん細胞がブレーキをかけていた免疫細胞の働きを活発にして、がん細胞の縮小を図る「がん免疫療法薬」です。

 がん細胞は、自分が「敵ではない」と欺くために免疫細胞に握手を求めます。握手された免疫細胞は、がん細胞を「敵ではない」と認識して攻撃を止めてしまうのです。免疫細胞の働きを抑えたがん細胞はその間にどんどん増殖していくのです。

 オプジーボはその握手を阻止して、免疫細胞に「がん細胞は敵だ」と知らせることができる薬です。

 肺がんでの適用は、非小細胞肺がんのうち、切除不能で初めの抗がん剤で効かなかった患者が対象です。非小細胞肺がんは肺がんの約8割を占め、気管支からの発生が多い扁平上皮がん(約3割)と、末梢部の発生が多い腺がん(約5割)に大きく分類されます。

 欧米などでの治験でオプジーボはすごい結果を出しました。再発した扁平上皮がんの患者272人にオプジーボとサノフィ社製の肺がん治療薬ドセタキセル(商品名:タキソテール)で比較したところ、1年後の生存率は、ドセタキセル24%に対し、オプジーボは42%という結果が出たのです。そしてドセタキセルと比べ、生存期間を約3カ月延長する(扁平上皮がんでは6カ月→9.2カ月、非扁平上皮がんでは9.4カ月→12.2カ月)としました。

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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