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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

劇的にがん患者の生存率を高める夢の新薬で、一部の人に重篤な糖尿病等の副作用発生!

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 疲労や下痢などの副作用が出たのは131人中76人(ドセタキセル129人中111人)。うち、重篤例は9人(同71人)。抗がん剤治療で多くの患者が苦悩する脱毛症はオプジーボでは0人(同29人)でした。腺がんでも生存率でドセタキセルを上回り、オプジーボの有効性が明確であるとして、いずれの治験も途中で異例の中止となり、早期の実用化に至りました。

効果が現れない患者も

 一方、課題もわかってきました。非小細胞肺がんの患者にオプジーボを使用した医師の評価は、がんが縮小した割合は2~3割だとし、まったく効果のない患者も多くいるというのです。

 オプジーボは、がん細胞がブレーキをかけている免疫システムの解除によって免疫力を高めるものなので、リウマチなど自己免疫疾患の患者には使うことができませんし、高齢者など、元々の免疫力が弱っている患者には劇的な効果は期待できません。

 日本肺癌学会も「すべての患者に有効な『夢の新薬』ではない」と、過度な期待への警鐘を鳴らしています。

 製造販売元の小野薬品工業によると、14年の承認以降、オプジーボを投与された推定患者数は今年4月末時点で5976人、その中で2865人になんらかの副作用があり、うち763人が重篤例と報告されています。

 今までの肺がん治療では前例がほぼなかった1型糖尿病の重篤例もありますし、全身の筋力が低下する重症筋無力症を発症して死亡した事例もあります。

 臨床試験では、投与を受けた患者の約2割に有効とされましたが、どの患者に効果があるかを事前に見極めることは困難です。

効き目が予想できるようになる?

 そんななか今年5月、オプジーボの効き目を予測できる「目印」を見つけたと、京都大学の小川誠司教授(分子腫瘍学)らの研究チームが英科学誌「ネイチャー」に発表しました。オプジーボは高額な薬ですから、効き目を予測できればオプジーボの適正使用に大いに役立つ可能性があります。

 従来の抗がん剤は、すべてのがん患者に投与されていましたが、近年は特定の遺伝子を持つ人にだけ劇的に効果がある新しいタイプの抗がん剤が増えています。このタイプでは、投与前に患者の薬効や副作用を判別する診断薬を使います。オプジーボも効果がない患者が一定数いるため、事前に効果を判別する診断薬の開発が必要とされていました。

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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