毎日うだるような暑さが続いていますね。この時季、気になるのが汗のニオイです。みなさんも、通勤電車に備えて朝からわきの下などに制汗剤を「シューッ」としていませんか。今日はその制汗剤について考えてみたいと思います。
汗は、汗腺という穴から出てきます。汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺などありますが、分泌される汗自体は臭わないことがわかってきました。哺乳類の芳香腺が退化したものといわれ、腋臭の原因とされるアポクリン腺。この汗腺から分泌される汗も、粘度は高いけれど無臭なのです。ただ、少量含まれるたんぱく質や脂質といった成分が、皮膚表面に存在する細菌のエサとなり、菌が繁殖して成分が分解されるとニオイが発生します。
わきの下など、アポクリン腺の多い場所で菌が増えると、ニオイをさらに悪化させることになります。したがって、菌や湿度を抑えることが対処法となります。日頃の手入れとしては、汗腺を詰まらせないことがポイントなのです。もしも汗腺自体をコーティングして塞いでしまったら、一時的に抑えていた汗腺からの分泌が再び始まったときに、湿度を高めてしまい、また新たに菌が繁殖しやすくなる環境をつくってしまうからです。
各化粧品メーカーは、糊状のものやシートになったもの、ミストなど、さまざまな制汗剤を発売していますが、日本の法律において一般化粧品では「汗を抑える」「臭いを抑える」などと謳ってはいけないことになっています。「医薬部外品」に申請し、認められて初めて「汗や汗の臭いを抑える」と広告することができるのです。すなわち、制汗剤はすべて医薬部外品です。みなさんが普段使用しているスプレー缶にも医薬部外品と書いてあるはずです。
化粧品や薬は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(一般名称:薬事法、医薬品医療機器等法)に基づいて製造販売されています。「薬用化粧品」や「医薬部外品」といわれるものは日本独自のカテゴリーで、医薬品と化粧品の中間に存在するものです。
この医薬部外品は少々クセモノなので、また別の機会に詳しく解説しますが、問題点のひとつは、同じ原料でも医薬部外品と化粧品では名称が異なることです。たとえば、「o-シメン-5-オール」という成分は、医薬部外品では「イソプロピルメチルフェノール」と表記されます。この成分は制汗剤によく配合されています。