制汗剤を使うとさらに臭くなる?
各商品の成分構成を見ると、メーカーやパッケージは違えど、その中身はよく似ていることがわかります。菌を抑える成分、一部に殺菌する成分や消炎作用のある紛体、そしてポリマーが基本構成です。「シルバー缶の制汗剤は効きそう」「やさしい石けんの香りはマイルドで肌に良さそう」「制汗剤は、それぞれまったく違うものではないか」……、こういった考えは、みなさんの錯覚です。
注目してほしいのは、<>で示したポリマー剤です。抗菌剤や殺菌剤で菌を抑えるという作用は、ニオイを抑えることになるでしょうが、ポリマーは「臭いものにフタをする」ものです。これでは、再び汗腺が汗を分泌し始めると、汗腺やその付近の湿度が高くなり、ますます臭くなるという悪循環を生みます。メーカーからすると、制汗剤がどんどん売れる好循環となるのでしょう。
出口の先を塞がれては、汗腺への負担も大きくなりがちです。汗腺の通気性を確保できるように、菌の繁殖を抑えたら、その後はポリマーではなく、少し粉をはたくのが基本です。赤ちゃんのあせも対策などに使われるベビーパウダーに含まれるタルク(滑石)は、アスベストが入っているとの誤認もあるようですが、現在の日本では、アスベストがまったく含まれていない原料のみが使用されています。ただ、タルクだけではアルカリ性で皮膚の悪玉菌繁殖を招くこともあるので、酸性のパウダーや酸性化粧水などで酸度を補充することも大切です。
何はともあれ、仕事も掃除も体も「臭いものにフタをする」のでは、解決にならないものです。
(文=小澤貴子/東京美容科学研究所所長)●小澤貴子
東京美容科学研究所所長。工学博士(応用化学)。上智大学理工学部応用化学修士課程修了後、大手化学会社の研究員、上智大学理工学部化学科非常勤助手を経て、東京美容科学研究所にて肌と美容の研究に携わる。正しい美容科学の普及をめざして全国で講習会や講演を行っている。主な著書は、『ウソをつく化粧品』(フォレスト出版)。