ほかにもいくつかありますが、わかりやすいのは水です。単なる水にもかかわらず、医薬部外品になると「精製水」に出世します。店頭では一般化粧品と医薬部外品は混在して陳列されていますから、同じ成分であっても医薬部外品のほうが効きそうな気がしてしまいます。
また、化粧品では全成分を表示することが義務化されていますが、医薬部外品はその必要がないのも問題です。ただ、最近は日本化粧品工業連合会の自主基準によって、すべての成分を表示している商品も増えてきました。
制汗剤の成分の実例
実際に販売されている制汗剤の成分を見てみましょう。
【一般的な制汗剤の全成分】
※以下、<>表記はポリマー剤。後述参照。
・Aスプレータイプ
有効成分:クロルヒドロキシアルミニウム、酸化亜鉛混合物V、緑茶乾留エキス、イソプロピルメチルフェノール
そのほかの成分:LPG、イソペンタン、ミリスチン酸イソプロピル、<シクロジメチコン>、シリコン被覆タルク、タルク、イソステアリルアルコール、セリサイト、ヒドロキシアパタイト、<POE・ジメチコン共重合体>、メントール、メンチルグリセリルエーテル、無水エタノール、BHT、香料
・Bロールタイプ
有効成分:クロルヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノール
そのほかの成分:エタノール、<POE・ジメチコン共重合体>、ヒドロキシプロピルセルロース、<アクリル樹脂アルカノールアミン液>、メントール、香料
・Cスプレータイプ
有効成分:イソプロピルメチルフェノール、焼ミョウバン、アバサイダーC
そのほかの成分:<ヒアルロン酸ナトリウム(2)>、合成ケイ酸ナトリウム、マグネシウム、濃グリセリン、液化石油ガス、無水エタノール、タルク、<メチルフェニルポリシロキサン>、無水ケイ酸、パルミチン酸2-エチルヘキシル、<ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体>、ステアリン酸カルシウム、被覆粉末EZ(酸化亜鉛)
クロルヒドロキシアルミニウムとアバサイダーCは菌の繁殖を抑える作用があり、イソプロピルメチルフェノールは殺菌剤です。こうした成分は、一般化粧品でも使用できます(ただし、一般化粧品と医薬部外品で配合量制限が異なることもあります)。
つまり、同じ有効成分の原料によって、同じ効果を得られる商品を一般化粧品でつくることもできるのです。ただ、「制汗剤」という名称や「臭いを抑える」と謳うことができないので、「気になる臭いに……」という程度の表現にとどまります。すると、効果は同じでも、「あまり効かなそう」と消費者は思いこみ、売れないでしょう。