勝ち組がつくる「普通」を放棄し、何度でも「人生をあきらめ」れば人生は楽しくなる!
山田 それに、僕は「なんにも得意じゃない人」っていると思うんですよ。にもかかわらず、「みんな、何かが得意で何かの役に立つはずだ」と喧伝されているのがおかしい。なんにも得意じゃない人も、みんなと一緒に生きていっていい。でも、今はある基準に「普通」が置かれ、そこに達しないと、コンプレックスに感じてしまう仕組みになっていますよね。
田中 なるほど。それはそのとおりですね。だから、「一億総活躍社会」っていわれた時に「恐ろしい」と感じるわけです。
山田 「嘘つけ!」ってことですからね。やっぱり相対的なものですから、みんなが活躍している状態は、逆に誰も活躍していない状態ですよ。勝つ人がいて負ける人がいるのに、「活躍」が普通になってしまうのは不健全な状態だと思います。だから、「一億総活躍」ってヘンな発想ですよね。
人生、何度リセットしても生きていける
田中 日本は新卒一括採用で、学校出たての何もできない人材を採ってお金と時間をかけて育成して……という仕組みなので、一度でも道を外れた人は戻りづらいシステムになっているんですよ。
山田 親の教育方針で子供の時はファミコンやテレビがNGだったんですが、よく「ファミコンはリセットしたことないけど、人生はリセットしたことある」と言っています。今は「リセット=途中であきらめる、投げ出す」みたいに悪い意味でとらえられることが多いですが、僕は何度でもリセットしていいと思いますね。
田中 「何度リセットしてもいい」という考え方はすごくいいですね。会社員であれば、「チャレンジしたいけど、このキャリアを無駄にしたくない」「10年勤めたから、これからもこの会社で我慢しよう」と思ってしまうわけです。「リセットしたら、これまでの積み重ねがゼロになる」って。
山田 そういう執着って、いい方向に転がることは少ないと思います。どんな業界でも同じだと思いますが、お笑いの世界だったら、いつまでも「ルネッサ~ンス!」にしがみついていたらダメでしょう。一方で、例えば「アメリカでは中途採用が多いから、道を外れても戻りやすい」といった違いはあるんですか?
田中 例えば、出世レースの仕組みは日米で全然違います。アメリカでは、30歳前後で「もう、この会社にいても未来はないよ」と通告されるので、ある意味、答えが早く出るわけです。一方、日本の場合は40歳すぎまで結論が出ない。若い時は差が出ないようにして、長年かけて会社に忠誠を誓わせておいて、中年になってから「もう部長にはなれないよ」みたいなことになる。その年齢ではもう引き返せないし、転職も難しい。
これは「早い選抜」と「遅い選抜」といわれるのですが、日本では「出世はしないけれど、しがみついていれば死にはしない」という状態になりがちです。そして、結果的に「中年男性の7割が人生つまらない」ということになってしまう。
ただ、その時に一度「会社を辞める」という選択肢を描いてみて、「あえて残る」という結論に達すれば、単純に「しがみついている」という状態とは違って、仕事に対する新たなモチベーションが生まれてくると思います。
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『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』 男は不自由だ。子どもの頃から何かを成し遂げるべく競争するように育てられ、働くのが当たり前のように求められてきた。では、定年を迎えたら解放されるのか。否、「年収一千万の俺」「部長の俺」ではなくなったとき、「俺って何だったんだろう」と突然、喪失感と虚無感に襲われ、趣味の世界ですら、やおら競争を始めてしまうのだ。本書は、タレント・エッセイストとして活躍する小島慶子と、男性学の専門家・田中俊之が、さまざまなテーマで男の生きづらさについて議論する。男が変わることで、女も変わる。男女はコインの裏表(うらおもて)なのだ。