学校一斉休校、逆にコロナによる死亡率上昇の懸念との報告…小児の心身を脅かす弊害
3月2日から小中高校・大学の臨時休校が指示され、非常事態宣言が解除された5月25日以降も、登校日数や授業時間の減少が続いており、完全復旧には至っていない。学校での集団生活による感染や登下校中の感染を防ぐための方策で、ほとんどの父兄や教師たちはこの方策に賛同している。
しかし、去る5月20日、日本小児科学会は「小児に関するかぎり、COVID-19=新型コロナ感染症が直接もたらす影響よりも、COVID-19関連健康被害のほうがはるかに大きくなることが予想される」との見解を発表した。それによると、以下が挙げられている。
(1)COVID-19患者のなかで小児が占める割合は少なく、そのほとんどが家庭内感染
(2)小児のCOVID-19は成人と比べて軽症で、死亡例もほとんどない
(3)ほとんどの小児COVID-19患者は経過観察、または対症療法で十分
(4)海外での報告でも、学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しく、逆に医療従事者(子供たちの親)が仕事を休まざるを得なくなるためにCOVID-19の死亡率を高める可能性がある、との指摘あり
(5)教育・保育・療育・医療福祉施設などの閉鎖が小児の心身を脅かしている
スウェーデンのカロリンスカ研究所のヨナス・F・ルドヴィグソン博士も、「学校を再開してもCOVID-19 による高齢者の死亡率には影響しない」とActa Paediatrica(5月19日付オンライン版)で発表している。その理由として、以下があげられている。
1.COVID-19 患者に占める小児の割合は極めて低く、小児は重症化リスクの高い高齢者との接触は極めて少ない
2.小児は新型コロナウイルスに感染しても保有ウイルス量が少ないとされており、くしゃみ、咳などの症状も稀なので他者に感染させるリスクが少ない
3.小児が家庭内感染の発端者となることは稀で、小児患者がアウトブレイク(爆発感染)を引き起こす可能性は極めて低い
そして「小児はCOVID-19 のパンデミックに大きな役割は果たしていない。よって学校などが再開されても高齢者のCOVID-19 死亡に及ぼす影響は低い」と結論付けている。
引きこもり生活による弊害
そもそも新型コロナウイルスに100人感染しても、
・80人=無~軽症状
・20人=中~重症化(そのうち17人が治療で治癒、3人が死亡)
であり、死亡する人は以下とされている。
1.高齢者
2.慢性の呼吸器病(肺気腫、喘息)、心臓病、腎臓病、糖尿病などの持病のある免疫力の低下している人
3.喫煙者
4.BMI=30以上の肥満者
(BMI=体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で、170センチ、70キログラムの人のBMIは、70÷1.7÷1.7=24.2)
小児(15歳未満)で上記に当てはまる人はほぼ皆無であろう。それよりも、学校閉鎖により、自宅内での引きこもり生活による弊害が露呈してきている。
1.登下校での歩行がなくなり、自宅に引きこもる(運動不足)
2.人間(人と人との間)という文字が示すように学校での集団生活をし、友人、先生と会話を交わすことで保たれる心身の健康が阻害される
3.自宅でのスマホゲームで時間をつぶす(90%以上の小学生がスマホを持っている)
これらによって、
・筋力・体力の低下
・睡眠時間の乱れ(昼夜逆転など)
・眼精疲労・視力低下
・イライラ、焦燥感、意欲の低下→家族への暴言、暴力
などが惹起されやすくなる。
国立成育医療研究センターの調査(4~5月に7~17歳2591人にアンケート)でも、「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」(39%)、「集中できない」(39%)、「すぐにイライラする」(31%)、「自分の体を傷つけたり、家族やペットに暴力をふるうことがある」(10%)などの結果が出ている。
“school”(学校)、“scholar”(学者)、“scholarship”(奨学金)、の“schol”はギリシャ語のskhole(leisure=暇)から来ている。古代ギリシャでは生活に余裕のある“暇な人”が学問をしたのであろう。いまだに完全な登校やクラブ活動を自粛させられて心身ともに超暇になっている生徒たちは、“school”の完全再開を切望しているはずである。
大人たちはそれに応えてあげる義務があるはずだ。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)