骨粗鬆症に関連する骨折後の死亡率は、「男性のほうが女性よりも高い」――。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)助教授で整形外科医のAlan Zhang氏らの報告により、それが明らかになった。
骨粗鬆症とは、骨の化学的組成に異常はないものの、単位容積当たりの骨質量が減少し、骨が粗く、もろくなってしまう状態のこと。栄養、内分泌、遺伝などにより、骨の中のカルシウムが少なくなり、骨がもろくなってしまう疾患の総称だ。
原因には諸説があるが、骨の生理的な老化に種々の因子が加わって発症するといわれている。詳しくは「骨粗鬆症」を参照してほしい。
骨折した100万人超の患者データを分析
米国では、骨粗鬆症の患者は4400万人を超え、この疾患により年間約200万件の骨折が生じている。今回の研究によると、骨粗鬆症に関連した初回の「脆弱性骨折」が起きる可能性は、女性のほうが高かった。一方、その後に脆弱性骨折が再び生じる可能性は男性でも同程度。ただし、死亡リスクは男性のほうが高かったという。
日本での患者数に関しては、公益財団法人日本骨粗鬆症財団が、以下のように解説している。
「日本の総人口の10%弱、すなわち約1100万人が骨粗鬆症で、現在は症状が出なくても、いずれ腰痛や骨折を起こす危険が大きいといわれています。危険の程度を厳しく予測するかどうか、つまり、どこまで骨量が減少すれば危険とするかによって多少変わってきますが、骨粗鬆症予備軍まで含めると2000万人に達するかもしれません」(公益財団法人日本骨粗鬆症財団のホームページより)
今回のZhang氏らの研究では、骨粗鬆症を有し、2005~09年に骨折を生じた、65歳以上の米国患者100万人超のデータを分析。対象者は87%が女性と、圧倒的に多い。
また、骨折から1年後の死亡率は、男性が約19%、女性が13%であった。このように死亡率には性差が見られたが、足関節骨折のみは例外で、男女ともに8%強であった。
女性では、初回の骨折が起こる可能性は男性の5倍であったものの、その骨折後3年以内にさらなる骨折を生じるリスクは、やや低かった。
同様に、初回の骨折で手術を要した男性は、3年以内にさらなる骨折を生じさせる可能性が高かった。また、脊椎圧迫骨折の場合のみ、続発する骨折のリスクは男女とも同程度であった。
Zhang氏は「本研究により骨粗鬆症に関連する脆弱性骨折リスクには、患者の性別が影響する可能性があることが示された」と話している。
この研究結果は、米サンディエゴで3月14~17日に開催された米国整形外科学会(AAOS)の年次集会で発表された。ただし、本研究は査読を受け、医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなす必要がある。
「骨粗鬆症は女性の病気」と思われがちだが……
今回の研究でも明らかなように、発症は圧倒的に女性が多い。特に閉経による女性ホルモン分泌の減少が大きく関係しているといわれる。女性ホルモンは、骨の中のカルシウムが血液中に溶け出すことを抑制しているが、閉経でこの働きが弱まり骨密度などが急速に低下するためだ。
そのため、「骨粗鬆症は女性の病気」と思われがちだが、男性も発症する。骨粗鬆症の男女差に関する研究はさまざまなものがあり、東京都健康長寿医療センターの森聖二郎氏は、「男性骨粗鬆症」について、次のように指摘している(「基礎老化研究」34(3);13崖17,2010)。
「男性では、骨粗鬆症の罹患率ならびに骨折発生率は、女性の約3分の1と推計される。しかし、骨折後の死亡リスクの上昇ならびに生活障害の度合いは、男性が女性より深刻である」
そして、「男性が女性に比較して骨折後の死亡リスクの上昇がより大きいという理由は、現時点では不明といわざるを得ない」としながらも、男性骨粗鬆症については、以下のように言及している。
「今までは閉経後骨粗鬆症の陰に埋もれて、医師からも患者からもあまり注目されてこなかった領域であるが、高齢者人口の増加とともに、その患者数は確実に増加しつつある。男性は女性に比較して骨折後の死亡リスクの上昇がより大きいことから、今後、男性骨粗鬆症は高齢者医療において重要なテーマになると思われる」
骨粗鬆症に関する男女差の解明は、今後の大きなテーマだ。そして当然ながら、性別による治療法の確立が、もっともわれわれの生活に直結してくる。
(文=ヘルスプレス編集部)