2025年、団塊の世代はすべて75歳以上になり、日本の高齢化社会はピークを迎える――。
4月3日付の朝日新聞の記事によると、2025年に向けて全国の入院ベッドを1割以上、実に15万床以上削減し、入院患者を在宅医療へ移行させる案が「地域医療構想」によって計画されているという。
自宅で高齢者を介護する機会は、これからますます増えていくことは間違いない。
「自分の親や家族を介護するようになったとき、その相手との暖かい関係を維持したままでいられるだろうか」
「もし認知症が進んだら、無理やり身体を押さえつけたり、意に添わないケアをしてしまうのではないか」
そんな不安を抱いてしまう人もいるだろう。そこで参考になりそうなのが、いま介護の世界で俄然注目されている「ユマニチュード」というケアの技法だ。
たとえば、介護施設で高齢の女性にシャワーを浴びせようとするときに、体をキレイにしようと思ってやっているのに、介護される側は何をされようとしているのか理解できず、激しく抵抗してしまう――。そんなことは珍しくない。
しかし、このユマニチュードという技法を使うことによって、女性は穏やかに介助者にお礼も述べながらシャワーを浴びるようになったりする。そのような効果のあるユマニチュードとは、どのような技法なのだろうか。
「見つめる」「話しかける」「触れる」「寝たきりにしない」
ユマニチュードとは、「人間らしさを取り戻す」という意味の造語である。いまから35年ほど前、フランスで体育学の教師をしていたイヴ・ジネストさんが、同僚のロゼット・マレスコッティさんと共に考案した。
認知症患者がケアを拒絶するのは、じっとしていることを求められ、生きている尊厳にかかわる「動く」ことを禁じられるからではないか――そのような仮説を基に考案された。
認知症ケアの現場を回ることでジネストさんが確立したユマニチュードの技法は、相手の動きを妨げず、尊厳を重んじることが特徴だ。具体的には「見つめる」「話しかける」「触れる」「寝たきりにしない」ということを基本としている。