恐怖感を与えやすいのはコレ
これらは一見当たり前のようだが、多忙な介護の現場では意外とないがしろにされていることが多い。そして、ただそれらをすればいいのではなく、そのやり方と姿勢にポイントがある。
たとえば、「見つめる」際にベッドや車いすにいる人を立ったまま見下ろすと、相手は威圧感を感じてしまう。自分もしゃがんで相手と同じ目線で話すことで、対等に接していることが相手にも伝わる。
また「話しかける」ときは声のトーンも大事だが、それ以上に「用件を伝える」だけにしないこと。「オムツを変えにきたよ」と用事だけを伝えると、自分の目的だけを優先しているように思えてしまうが、挨拶や天気の話題から入るようにすれば相手との絆を感じることができる。
「触れる」のは大事だが、顔や手は敏感な場所なので、いきなり触るとビックリしてしまう。特に<手をつかんでひっぱる>行為は恐怖感を与えやすい。腕や背中など抵抗の少ない場所を、広く、優しく、ゆっくりと触ることで、安心感を与えられる。
そして「寝たきりにさせない」で「立つ」ことは、もちろん身体の機能や健康を維持する上で欠かせない。同時に、人間としての尊厳を保つうえでも必要だ。
普通のお年寄りと接するときにも適応できる
ユマニチュードの技法には、ほかにもさまざまなポイントがあり、それは人間の知覚・感情・言語すべてに関わる包括的なコミュニケーションの仕組みでもある。
そして、そのエッセンスは認知症患者だけではなく、普通のお年寄りと接するときにも十分適応できるものだ。
ユマニチュードは、国立病院機構東京医療センター総合内科医長の本田美和子氏によって日本でも紹介され、『ユマニチュード入門』(医学書院)、『「ユマニチュード」という革命』(誠光堂新光社)といった書籍も刊行されている。
高齢者がさらに増えていく社会において、ユマニチュードの注目度はますます高まっていくだろう。
(文=ヘルスプレス編集部)