これだけ医学が発達しても、腰痛の発生率は減っていない。腰痛は、いまだ多くの人を悩ます現代病であり、日本ばかりか先進国にとっては“国民病”といえるほどである。
そのような国民病であるならば、国を挙げて腰痛に取り組みべきではないだろうか。
腰痛には国を挙げて対策を
先述のように、腰痛に悩んでいるのは日本だけではない。特に先進国では、国民病と認識されているほど患者数が多い。しかし、多くの先進国が日本と異なるのは、その国民病である腰痛に対して、国を挙げて対策を講じている点である。
具体的には、テレビやラジオなどのメディアを介して、腰痛に対する正しい知識の啓蒙を行っているのだ。
オーストラリアは、1997~98年にかけて「Back Pain:Don’t Take It Lying Down(腰痛は横になるな)」というキャンペーンを行った。これはテレビコマーシャルを使用し、腰痛の正しい対処法を伝えるというものだ。テレビコマーシャルの主なメッセージは以下の通り。
●腰痛は深刻なケガではありません。
●普段の活動を続け、必要以上に安静を取らないで、可能であれば運動や仕事を続けてください。
●腰痛に対して前向きな気持ちをもつことが重要です。
●画像診断は、時に重要ではありません。
●手術は、深刻な腰痛でなければ必要ありません。
イギリスのスコットランドでも、2000~03年にかけて「Working Backs Scotland」というキャンペーンを行い、ラジオで次のようなメッセージを発した。
●Stay Active(動いてください)。
●腰痛に対して横になって治さないで。
●腰痛に対して自分でできることはたくさんあります。
●腰痛の予後は大抵の場合が良好です。
ノルウェーでは2002~05年、テレビとラジオ、さらには映画館のコマーシャルで腰痛のキャンペーンを行っている。内容は上記の2つと同じようにシンプルなもので、「画像所見は、あてにならないことがある。腰痛は危険じゃない、手術は滅多に必要ない」というようなものだ。