高カリウム食が余計な塩分を排出する
この報告をしたのは、米・南カリフォルニア大学のアリシア・マクドナフ教授が率いる研究グループ。4月発行の医学誌『The American Journal of Physiology – Endocrinology and Metabolism』に発表した。
前出の通り、血圧を下げる方法としてすでに確立されているのは、食事からのナトリウムの摂取量を抑えることだ。
そこで研究グループは、ナトリウム・カリウム比と高血圧に関する過去の研究を詳しく調べた。
その結果、尿中へのカリウムの排泄量、あるいは食事調査から推定したカリウムの摂取量が多い場合は、ナトリウムの摂取量にかかわらず血圧が低がるという結果を導き出した。また、カリウムのサプリメントを使った研究でも、カリウムの補給が血圧の低下に直接的な効果を発揮することが示されたという。
さらに研究グループは、マウスを使ったいくつかの研究を対象に、カリウムがどんなメカニズムで降圧効果を発揮するかについてもレビューした。
それによると、動物の体はカリウムを使ってナトリウムの血中濃度をコントロールしていることがわかった。そうして心臓や神経、筋肉の機能を正常に維持することができるのだ。
「カリウムの多い食事を摂ると、腎臓はより多くのナトリウムと水分を排出します。高カリウム食品は、利尿剤の作用に似た働きをするのです」と、マクドナフ教授は説明している。
ただし、腎臓病や透析を受けている人はカリウム制限が必要になるため、注意が必要だ。
カリウムで莫大な医療費の抑制も?
研究グループは「加工食品のナトリウム量を減らす」「栄養表示にカリウムの含有量を加える」などの取り組みによりカリウムの摂取量が増えれば、「血圧の改善や心血管の病気のリスクが低下し、ひいては莫大な医療費の抑制にもつながるだろう」と期待する。
とはいえ、食事で多くのカリウムを摂取するには、それなりの努力が必要だ。
「ナトリウムが及ぼす血圧への影響を抑えるためには、1日4.7gのカリウムを摂取することを推奨します」と教授は言う。バナナなら11本分、黒豆1カップ半に相当する量で、たやすく摂取できる量ではない。
ちなみに、厚労省が推奨する日本人の食事摂取基準によると、カリウムの1日摂取目安量は、成人男子では2.5g、成人女子では2gとされている。先の推奨値の約半分だが、まずは目標にしてみてはどうだろうか。
特にカリウムが多い食品としては、切り干し大根、かんぴょう、パセリ、干しぶどう、アボカド、山芋などがある。血圧が気になる人は、自分で調理する時だけでも薄味を心がけ、これらの食品を食事に取り入れることから始めてみよう。
(文=ヘルスプレス編集部)