静岡市は転入者数が転出者数を超えたことがない
――住みやすく子育てしやすいといわれる静岡市だが、15年の国勢調査によると人口は70万4989人で政令指定都市20市の中では最下位。また、10~15年の5年間の人口減少数は政令指定都市の中で2番目に多いという。この原因は、どこにあるか。
秋山 全国に先んじて高齢化が進んでいるのが最大の原因だが、転入者数が転出者数を超えたことが一度もないという事実も課題ととらえている。転出においては、アクセスの良さという静岡市のメリットが諸刃の剣になっている。それが「出やすい」ということにつながり、東京や名古屋などの大都市に人口が流出しているからだ。
小島 大学進学から就職の時期にあたる18~22歳の若者の流出が目立ち、転出先は主に首都圏となっている。首都圏に出た若者がそのまま首都圏で就職し、静岡市に戻ってきていないことがわかっている。
東京で就職活動をすれば、必然的に東京近郊の会社の情報が集まりやすいため、東京で就職するケースが多い。そこで、東京在住の学生にも静岡市の企業の就職活動が行えるように、市としても東京での会社説明会の開催を積極的に支援している。
また、静岡市から首都圏の大学などに通う学生に新幹線定期券の一部を無利子で貸与し、卒業後も静岡市に居住すれば返還を免除するという事業をスタートさせた。就職活動の拠点を静岡市にしてもらうことで、地元就職の選択肢を広げてもらえるように後押しをしている。
静岡市の「第3次静岡市総合計画」では、「2025年に総人口70万人を維持」を最大のストレッチ目標として掲げている。人口が現在の傾向で推移した場合、25年には67万8000人となることが予想されている。目標である70万人維持を実現するには、18~40歳の転入率が急カーブを描くように増加しなければならず、転出が続く現状ではかなり厳しい数字である。
100人の誘致より10人の起業家が生まれる土壌を
――今後は、企業や大学の誘致に力を入れていくのか。
秋山 全国的な人口減少の流れの中では、大学や企業の誘致は簡単ではない。また、企業の規模が大きくなれば東京に進出すること自体はやむを得ない部分もある。現実的には、人においても企業においても、市外から誘致するだけでなく、市外への流出をできる限り少なくするということも重要と考えている。
小島 静岡市は、起業しやすい街でありたいと思っている。従業員100人規模の会社を誘致することは難しいが、10人の起業家が10の会社をつくって10人の従業員を雇用することで100人の雇用を生み出してほしい。我々は、そのための支援をしていきたいと思っている。
秋山 首都圏からのアクセスが良く、静岡県内最大の商圏の中心部である静岡市で起業するメリットは大きい。また、起業者率は政令指定都市の中で1位と、環境の良さがうかがえる。
――ありがとうございました。