なぜ、農村の白人層は短命か?
今回の研究を主導した米ボストン大学公衆衛生学部のジェイコブ・ボー氏も、「生活状況の悪化に伴う喫煙率やがん罹患率、違法薬物の使用率の上昇などが、地域の平均余命の短縮につながる要因だと考えられる」と話す。
しかし「政治」との関連については、「地域住民における健康面での停滞が、先のトランプ氏の投票率につながったと考えるのは、われわれ研究陣としてもいささか飛躍しすぎのように思う」と解釈する。
教育・環境・職業・収入などの社会的あるいは経済的な問題が、「平均余命」といった健康状態の指標に影響を及ぼす相関性については、従来から指摘されてきた。
ボー氏らの報告記事が掲載された前掲誌の同号に別の論文を寄せている、エリザベス・ステイン氏ら(米・ウィスコンシン大学)の研究結果も、こうした相関性を示唆する新たな知見だ。
ステイン氏が分析したのは、米国民に関する1999~2001年/2013~2015年の両期間における死亡データだ。結果、いずれの期間中も早期死亡率が約8%低下しているにもかかわらず、主に「農村地域に居住する白人」層の同率は上昇していることが分かった。
農村地域の早期死亡率を引き上げている主要因が、貧困理由や医療アクセスへの悪さに伴う自殺・中毒・肝疾患である点も明らかにされた。しかし、彼らの研究がそうした特定集団の劣悪条件と早期死亡率の因果関係を示したわけではない。
折しも米上院は今夏、トランプ氏が公約に掲げる「医療保険制度改革(オバマケア)改廃」に関連し、限定的廃止法案を採決し、結果は反対多数(49対51)で否決した。
保険未加入者層の支持を得ながら勝利し、オバマケアの廃止に失敗したトランプ政権。さて、課題山積である大統領自身の政治的余命は延長できるのだろうか。
(文=ヘルスプレス編集部)